高等部:高等部通信2月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-4

2025年4月7日

(2)発達のつまずきがあるお子様のワーキングメモリに関する具体的な支援

もともと記憶とは、20分後に42%、1時間後は56%、9時間後は64%、6日後は76%の割合で忘却してしまいます。忘却を食い止める方法は、一定時間過ぎた後に繰り返し復習するしかないとされています。学習したその日の夜、1日後、3日後、1週後と定期的に繰り返して復習することが不可欠です。その学習を負荷なく、楽しく行うには、彼らのワーキングメモリのつまずきを把握し理解した上で、彼らが学習しやすい環境や勉強の仕方を提示しなければなりません。彼らの負担にならないような課題や学習環境を提示してこそ、継続して勉強に取り組んでもらえるようになるのです。

そしてその結果、短期記憶が長期記憶に移行され、学習で身に付けた知識の幅が広がっていきます。できたことを褒めて認めてあげれば、自分に自信が持てるようになります。褒められることを嫌うお子様はいないと思います。今まで、自分では一生懸命にやっているつもりでも、出来ないことや間違えることが多いことに対して怒られたり馬鹿にされたり蔑まされたり、健常のお子様が経験したことのない思いをずっと積み重ねているお子様方が高等部に在籍している子どもたちなのです。

一生懸命取り組んでも認められないのなら、やってもしょうがないと諦めるのは大人だって同じです。ましてや非常に強いストレスや劣等感を持ちながら、他の選択肢が与えられないのであるならばそこから逃げたくなるのは十分理解できることだと思います。

情緒の混乱や無気力で不登校になる生徒の原因としては学力不振が上位に上がりますが、自分に自信が待てなくなれば学習意欲もなくなります。勉強においては、学習性無気力になる状況が学力不振になる一番の原因であると私は思っています。

だからこそ自信をつけさせていくことが大切です。苦手だと思うことに自信を持たせて自己肯定感を回復させていくことが、学力が向上する大きな要因になると思います。

そして、今すぐ学校のクラスメートと同じような問題を解けるようにするのではなく、そこに結びつく基礎的な内容からクリアしていくことが大切です。できることは努力することが可能で、できなかったことができるようになれば、次の目標が見えてくるものです。できないままでは不安が大きくなり、気持ちばかりが焦り、どこから勉強してよいのかわからない暗中模索の状況では、目標を定めることさえできません。

 

(3)試験前の勉強方法

そのため、自然学園では試験対策授業を行っているのです。試験問題はレポートからの出題になるため、教科担当の先生方が冬休み前にレポートをコピーしてテスト勉強用に手渡してくれているはずです。1月の授業は出題が予想されるレポートの課題を抜粋して後期試験の予想問題に取り組ませ、さらに試験1週間前の試験対策期間中の授業では、さらに問題を絞った模擬テストを授業の課題として準備して生徒に取り組ませるので、試験勉強を計画的にやりさえすれば得点できるテストになります。

書くことが苦手な生徒は勉強の工夫をしてください。視覚的な認知に凸凹があり、書いて覚えたり、読んで覚えたりすることが苦手な人はレポートを眺めていても飽きてしまい、覚えることができないでしょう。1月の授業で配布されたプリントや課題、試験対策期間で配布された予想問題などをパソコンでまとめ、文字に色づけしたり、イラストや写真を添付したりしながら整理して、スクリーンで視覚情報として流しながら、音声機能を使って入力した文字を繰り返し聞くことで、「読む・書く」の継時的な学習方法より楽に学習することができ、効果的に覚えやすくなるはずです。凸凹があるなら、その凸凹の特性を応用するLD(SLD)傾向の人にあった学習方法があるはずです。

目の前の次にできることを目標に置いて、努力してできるようにすることが自然学園で実践しているスモールステップの学習であり、学力アップメソッドと同じだと思っています。

普段の勉強で学習計画を立てるには、今自分がつまずいているところからもう一歩で手が届きそうな課題にチャレンジできるような目標を立てることが大切です。そうしていけば、課題ができた喜びや達成感を経験させていくことができるでしょう。できないことでの失望感より多くの成功体験が上回ることによって次のステップに向かう好奇心や学習意欲が出てきます。

そして人は褒められることで自尊心が満たされ、そこで得た自信が向上心につながってくるものなのです。最初は凸凹の凸のスキルで解法が見つけられるような課題を選んであげることから始めることが重要なのです。

褒められることの少ないお子様方は、何よりも褒められたい欲求で満ち溢れています。その欲求を満たすためには、ワーキンングメモリを始めとしたできない理由を把握することが大切です。そこからでないと有効な学習支援は実践できません。今まで自然学園の授業を受けてきた高等部の生徒の皆さん方なら必ず試験に向かい合い、その答えが導き出せるはずです。精一杯頑張ってください。

(※コラムに掲載されたものを一部抜粋しております。)

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