高等部:高等部通信3月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-2

2025年3月27日

不安な気持ちを小さくするには

人の行動は、その人が不安やストレスを感じている際にふと考える思いがその人の言動に大きな影響を与えると考えられています。何かを否定的に考える人の行動は、人を傷つけたり、やらなければいけないことから逃げたりして、人に迷惑をかける問題行動に繋がるケースが多いのです。いじめの例でいうと、今までのいじめられた経験から、誰かをいじめなければ必ず自分がいじめられてしまうといった考え方や、クラスの友達と仲良くなる未来より、自分が阻害されるような否定的な未来が待ち受けていることを確信してしまうような考え方に陥りやすいです。

これは、認知(人の考えや信念)の誤りに起因しています。その誤りを突き止め、その誤りから派生する問題行動を少なくするための行動を実践し、認知の誤りを改善していく療法を「認知行動療法」といい、医療機関や福祉施設、学校での特別支援教育などでプログラムされているSST(ソーシャルスキルトレーニング)などにも多く取り入れられています。

不安な気持ちを改善するにはどうしたらよいでしょう。それは自分自身に自信をつけることが一番有効な方法になります。ASD(自閉スペクトラム症)、ADHDの傾向がある人たちは自己評価が高く、自分の欠点を素直に認められないことから、自分に自信がないことを隠しながら「嘘をつく」「ごまかす」「報告しない」または「人のせいにして相手を攻撃する」などの誤学習が身に付いてしまっている人がいます。このような人ほど、周りから見ると「なぜあんなに自信がもてるの?」「根拠のない自信」「謙虚さがない」など周りから反発を買う人も少なくありません。誤学習の背景には、自分自身のコンプレックスや自信の無さが起因している人たちがほとんどです。そして、そのストレスからいじりやすい人、からかいの対象になりやすい多動的な人やおっちょこちょいな人、おとなしいクラスメートをターゲットにして悪口を言ったり疎外したり、人格を否定するような他者攻撃に走りがちです。このような人が一人いるだけでクラスの雰囲気は一変し、今までのいじめられた経験や、小中学校で起きた人間関係でのトラブル、クラスに居場所がなく不登校などを経験している、いわばトラウマ(PTSD)があるような人は、自分のことを言われていなくても不安が大きくなり、その場にいることをためらうようになるのです。

人には自分でも気付かない、良いところ、悪いところ、できること、できないところがあります。できるところには、自分では気付いていないだけで、他の誰よりも優れているところ、他の人ができないことができることもあるのです。そのことに気付かせてあげること、できることを褒めてあげてもっとできるようにしてあげること。そして、なるべく多くの成功事例を積み重ねることで、自分にできるという実感を植え付けていくことが自己肯定感の高さにつながります。それは『自信』となります。

人間関係も、自分に自信があれば自尊心が高まり、心にゆとりが生まれてきます。心のゆとりは、他者を許し、他者の要求や気持ちを、自分の主張より優先させてあげる気持ちのゆとりや心の大きさにつながってきます。そのことができれば、必ず人間関係が今よりうまくいくようになるでしょう。

クラスでもお友達が多くなり、自分を助けてくれたり、認めてくれたりする人たちが多くなり、充実した学校生活を送れるようになるでしょう。そのことは将来就労するためのスキルと直結するのです。

自然学園高等部では、将来的な就労や企業での就労実習に役立つための「感覚統合」「作業訓練」「SST」などのプログラムを授業として提供しています。具体的な対応を学ぶことで、学校生活の場面でも褒められることが多くなり、うまく人と繋がることへの積極性が生まれてくるはずです。自信が持てるようになることが、社会性の向上の何よりも優れた特効薬です。そのことは、人との繋がりや学校生活における不安や緊張を緩和することにも効果を発揮するでしょう。

(※コラムに掲載されたものを一部抜粋しております。)

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