高等部:高等部通信5月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-5
2025年5月12日
5、自然学園の学習支援について(レポートの取り組み)
本来レポートも教科書やワーク同様、視覚的な認知力が弱く、教科書を読むことや黒板の字を書き写すこと、漢字や英単語を覚えることが苦手な人たちは、自分一人で課題を解いてレポートの答えを書き込む作業は、苦手としていることの一つだと思います。まして発達障害がある子どもたちの先を見通す力が弱いという特性によって、宿題のように決められた期限までに提出することは、そのための工程が頭に浮かばないので「いつ」「どのように」やったらよいかわからないのです。
生徒の皆さんのそれぞれの凸凹や特性により物事を考える道筋がそれぞれ違うのです。一つひとつ段階を踏まえながら、解説を加えて理解を深めていくタイプの人もいれば、最初に視覚的に全体像を把握することで学習することのイメージをつかむことができ、その詳細の情報の複数を一度に処理することでその関係性を理解し、全体を理解するイメージがつながるタイプの人といるようです。その生徒にとってわかる学習の方法で認知の凸凹がそれぞれの勉強の仕方で補完できるのだと思います。このような学習の仕方は、前段は継次処理、後段は同時処理といわれています。
自然学園では、特別な場合を除いてレポートを家庭学習としてやらせることはありません。学力の遅れや認知発達のつまずきを配慮にいれた授業を進めていくことになります。聞くことが苦手な生徒には、必要ならば個別対応で具体的なイラストや写真をプロジェクターなどで見せながら、重要な項目を一つひとつゆっくり説明していく授業を展開していくこともあります。勉強が苦手なお子様でも、とてもわかりやすく感じてもらえると思います。黒板をノートに写すことが苦手な子どもたちには、黒板にまとめた要点を書き写させるように工夫しています。
教科学習のつまずきにおいては、「先生の説明が、早口で何を言っているのかわからない。」「黒板に書くことが多く書くスピードも速いので、ノートに書きれず中学校の先生と違って待ってくれない。」など授業について行けず個々の配慮がないことを理由に挙げる生徒が、最も多いように思われます。次に学習内容が急に難しくなりすぎて対応できないことを挙げています。視覚的な認知の弱さがある生徒(読字的、書字的)は、ノートや教科書だけを頼りに予習、復習をしていかないと理解できない高等学校の授業にあっぷあっぷでいるようです。試験を控えている生徒は、追い詰められたような喪失感を抱き、自信を無くしている生徒が多いように思います。
学習や授業を受けることの負担を軽減させるために、生徒一人ひとりの特性に応じてきめ細やかな対応をして、勉強に感じる彼らのイライラを少なくすることに重きを置きます。そして一人ひとりに合った勉強の仕方を教えていくのです。主に担任が中心になって各教科と連動しながら教科ごとの対応をしていきます。個々の配慮がない高等学校ではこのことが学習性無気力の状況を引き起し、すでに居場所をなくしている生徒が少なくありません。
しかしながら、このような学習面でのつまずきに対して高校の場合は自分で克服する以外方法がないのです。逆に言うと、自分に合った勉強の仕方を学んで習得すれば必ず成果を出るはずです。基礎学習をはじめとするアカデミックスキルもソーシャルスキルも学習性の能力であり、繰り返し学ぶことで習得できる能力だといわれています。勉強に対しあきらめて逃げ出した結果、未学習の状態が学力不振になっていただけなのです。
自然学園がお預かりしている子どもたちは、学習に必要としているすべての力が弱い知的なつまずきがある訳ではありません。子どもたちのそれぞれの得意な認知の仕方に気付かせ(または認知しやすい環境を提供し)、苦手である認知のつまずきを補うことで必ず学習成果が出てくのです。
学習性無気力の状態とは、漢字の習得ができないと一方的に叱責されたり、できないことを無理やりやらされたりして、その外的苦痛から逃れることができないときに生まれる未学習です。未学習とは苦手なことから意識的、無意識的に逃れようとして、経験し習得しなければいけない学習を身に付けることのできない状況を指します。
通信制高校だからといってレポートの答えだけ、黒板に書いた答えを書き写せばいいものではありません。社会に出るために必要な基礎学力は高校で学ばなければいけないのです。
彼らのモチベーションを上げるには、「できた、やればできた、ほめられた」という経験こそが、やる気や意欲につながり、苦手だった課題が対処すべき課題になり、学校生活の意欲にもつながっていきます。そのような意味では、いよいよ高等部の本格的な授業がスタートしています。十分遅れは取り戻せるので安心してください。
新入生の保護者の方々にとって、お子様の小中学校から継続している「勉強の遅れ」は最も気になることの一つではないかと思います。自然学園高等部では9月に学力考査があります。今から試験のことで焦らなくても大丈夫です。保護者の方々の気をもむ気持ちは充分理解できますが、あまり厳しく言い過ぎて学習性無気力感が強くなる状態を作らないように心がけて欲しいと思います。勉強の遅れはこれからでも十分取り戻せます。大切なことは今までやってきたことを継続することと、勉強を嫌いにさせないことです。そしてなにより精神的な安定を図り、学習無気力のきっかけを作らないことです。
もしお子様の精神的面での異変や落ち込みの気が付きましたらすぐにご相談ください。早いうちの対応が2次障害を軽減させる唯一の方法です。
自然学園学園長 小林浩