高等部:高等部通信5月号 学園長ブログ~可能性のとびら~ -3

2024年5月27日

3、「うつ」に見られる2次障害について

高等部に在籍する生徒の皆さんは、「読む・書く」に苦手さがあり、教科書やドリル的な自主学習教材を消化することにかなりの負担がかかる生徒です。ICTを利用した動画などの視聴覚授業でのスクーリングも、彼らのつまずきが配慮される余地もなく一方的な配信で学習が進められます。その積み重ねでつまずいた課題も、認知的な問題が起因して継次処理ができず、配信教材のコンテンツを見ても、どこから手をつけたらよいかわからない状態になり、視聴覚授業自体が成立しない可能性が高いと思います。現在の通信制高校の利点を生かした視聴覚での自宅学習は、高等学校でも特別支援教育を必要としている発達障害傾向がある生徒のニーズには合わないと私は考えます。

昨年から今年の初めにかけて多くの公立学校では、リモート授業や動画の配信授業が導入されました。授業についていけない生徒は学習課題にも当然ついていけず、学習に対して気が進まなくなり、他の人と比べて自分はできないと考える自己肯定感の低さが露呈してくる状況がありました。このことが、学校生活への不安につながったと私は思っています。学力不振は不登校になるきっかけの主な理由の一つです。

もともと新学期は、クラスメートが変わったり、担任の先生が変わったり、新しい環境に適応するのに時間がかかる人たちが多いので体調を崩しやすい時期です。新入生、中でも家庭にいる期間(時間)が長かった生徒ほど、新しい環境の変化についていけず、クラスになじめなかったり、いじめをうけたり、先生になじめなかったりした過去の嫌な思い出がフラッシュバックして不安を募らせている人も多いと思います。毎年夏休み明けに自殺者が多いと言われているように、長い休み中は、学校への不安があればあるほど不安が増大します。国立成育医療センターの調べでは、一昨年のコロナ禍で中程度の鬱を発症している高校生は全体の30%になると報道されていました。

春先のこの時期はそうでなくとも、入学前から新しい環境に適応できるか不安を抱えながら新学期を迎え、精神的なバランスが崩れたり、不安定さを助長しやすい時期なのですが、コロナ禍での学校の休校やイレギュラーな時間割のため、今まで以上に学校生活への不安が増大したと考えられています。また、これから梅雨入りすると、低気圧の影響で精神的にいつも以上に不安定な生徒が多くなることが想定できます。
 
一般的に「5月病」というと新入社員のサラリーマンや大学生の新入生などに見られる、新しい環境に適応できないことに起因する精神的な症状を指していました。ゴールデンウイーク明け頃から毎日の生活にやる気をなくしてしまう状態が続くことで、医学的には適応障害や気分障害、鬱(うつ)と診断される症状です。症状としては、いらいらすることが多くなったり、学校に行くことが億劫になったりすることがあります。「不安」「焦り」「憂鬱さ」が強く感じるようになることもその一つです。
 
朝、なかなか起きることができない、夜眠れない、食欲がない、頭痛、めまいなどを頻繁に訴えるようになったら要注意です。タイプ的に言うと、真面目で完璧主義的な性格で、早く環境に適応したいと頑張る気持ちが強い人ほど、期待していた新生活のギャップに落ち込んだり、必要以上に頑張りすぎたりして緊張が強くなり、モチベーションが継続できなくなる傾向にあるようです。このような症状が6月にかけて発症することを充分考えておかなければいけないことです。

自然学園に入学した新入生の皆さんが中学生の時はちょうどコロナ禍で、上述した状況を経験していると思います。慣れない環境での緊張を想像し、精神面の健康も含め健康状態を心配していました。4、5月ともにほとんどの1年生が元気に、そして積極的に授業に参加している状態で、クラス内でも問題行動が見られる生徒が出ず順調にGWまで来ました。そうは言っても一人ひとりのお子様が自分なりに相当緊張し頑張りを見せているので、GWの休みで緊張の糸が切れて体調を崩す生徒が出るのではないかと内心ではドキドキしていました。お陰様でGW明けもクラスは元気な生徒の皆さんの笑顔であふれています。先述したように、このような時期なのでお子様の気持ちの不安定さを見逃さないように家庭でも保護者の皆さんには十分に注意して欲しいと思います。

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