高等部:高等部通信5月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-2
2025年5月9日
2、高校生の「うつ」に見られる高1クライシスについて
高等部に在籍の生徒の皆さんは、「読む・書く」に苦手さがあり、教科書やワーク的な自主学習教材を消化することにかなりの負担がかかる生徒です。特別支援を必要とする発達障害傾向の子どもたちは、ICTを利用した動画などの視聴覚授業は、彼らの認知発達の凸凹故のつまずきがあるため、配信教材のコンテンツを見ても処理できない人が多いのではないでしょうか。現在の通信制高校の利点を生かした視聴覚での自宅学習型の通信制高等学校は一方的過ぎて取り組み方がわからない人が一定数いるのだろうと感じています。
高等学校における令和5年の不登校の生徒数は68,770人(前年60,575人)であり、前年度から8,195人の増加で過去最多になっています。増加率は前年度より若干低くなっています。(R4年度18.8%からR5年度13.5%)
高校における中途退学者は46,238人で(前年度43,401人)であり平成25年以降通信制高校の生徒数増加に伴い減少傾向でありましたが、令和2年を境に増加傾向を示しています。増加の背景として、高等学校進学やクラス替え等に伴う不適応の増加やコロナ禍の影響による登校意欲の低下などが考えられています。中途退学率は1.5%(前年度1.4 %)で 中途退学の主な理由として、進路変更によるものが最も多く、19,087人(前年度19,055人)となっており、割合は41.3%(前年度43.9 %)となっています。
それまでは不登校の大半は高校中退になっていると考えられます。高1クライシスとはいじめや不登校の増加は、学習の不安、人間関係の不安、通学の負担などが重なってこのような背景により起きやすくなる現象です。そうであるなら高等学校進学やクラス替え等に伴う不適応の増加は、この現象とリンクするのでGW明けの今の時期は高1クライシスに注意が必要です。
新学期は、クラスメートが変わったり、担任の先生が変わったり、新しい環境に適応するのに時間がかかる人たちが多いので体調を崩しやすい時期と考えられています。新入生は新しい環境の変化に適応できずにいる場合、家庭にいる機会が長ければ長いほど、クラスになじめなかったり、いじめを受けたり、先生になじめなかったりした過去の嫌な思い出がフラッシュバックして不安を募らせている人も多いと思います。毎年夏休み明けに自殺するお子様が多いと言われているように長い休み明けのお子様の心理は、学校の不安があればあるほど長い休みの間に不安は増大します。コロナ過での国立成育医療センターの調べでは中程度の鬱を発症している高校生は全体の30%になると報道されていました。
そして入学前から新しい環境への適応に対する不安を抱えながら新学期を迎え、春先は精神的なバランスが崩れ、精神的な不安定さが助長しやすいのもこの時期なのです。一般的な「5月病」というと新入社員のサラリーマンや大学生の新入生などに見られる、新しい環境に適応できないことに起因する精神的な症状を指していました。ゴールデンウイーク明け頃から毎日の生活にやる気をなくしてしまう状態が続くことで、医学的には適応障害や気分障害、鬱(うつ)と診断される症状です。症状としては、いらいらすることが多くなったり、学校に行くことが億劫になったりすることがあります。「不安」「焦り」「憂鬱さ」を強く感じるようになることもその一つです。
朝、なかなか起きることができない、夜眠れない、食欲がない、頭痛、めまいなどを頻繁に訴えるようになったら要注意です。タイプ的に言うと真面目で完璧主義的な性格で、自分で早く環境に適応したいと頑張る気持ちが強い人ほど、期待していた新生活のギャップに落ち込んだり、必要以上に頑張りすぎたりして緊張が強くなり、モチベーションが継続できなくなる傾向にあるようです。このような症状が6月にかけて発症する症状として充分考えていかなければいけないことです。
自然学園に入学した新入生の皆さんの中には小中学校の時に行き渋りや不登校を経験している生徒が少なくなく、慣れない環境での緊張による精神的な健康も含めた健康状態を心配していました。4月はほとんどの1年生が元気に積極的に授業に参加している状態でクラス内でも問題行動が見られる生徒も出ず順調にGWまで来ました。そうは言っても一人ひとりのお子様が自分なりに相当緊張し頑張りを見せているので、GWの休みで緊張の糸が切れて体調を崩す生徒が出るか内心ではドキドキしていました。お陰様でGW明けも元気な生徒の皆さんの笑顔でクラスはあふれかえっています。先述したように、このような時期なのでお子様の気持ちの不安定さを見逃さないように家庭でも保護者の皆さんには十分に注意していただきたいと思います。