高等部:高等部通信6月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-3

2024年7月12日

3、人間関係のトラブルについて

 

問題行動は、実際に社会との接点が多くなればなるほど増える傾向があり、社会的な接点が少なければ大きな問題にならないケースは少なくありません。お子様に問題行動があると親の子育てが間違っていると言う人がいますが、問題行動に至るお子様の特性は環境によって大きな影響を受けるので、家庭環境や成育歴だけが問題ではないのです。

 

「乱暴な言葉が多い」「暴力をふるうことがある」「じっとしていられない」「上手に人の話が聞けない」「順番を待てない」「勝ち負けなどこだわりが強い」「人まねができない」「お友達と遊べない」「遊びの仲間に入れない」「人に謝れない」などが保育園や幼稚園に入ると指摘されるようになる問題行動ですが、この時期は健常のお子様も落ち着きのなさや衝動性は目立つものです。発達障害傾向があるお子様方は、10歳までは特にADHDの特性である不注意性や衝動性が露呈しているお子様が多く、「暴力をふるう」「人の嫌がることを平気で言う」「物を投げる」「物を壊す」「授業に集中できない」「授業中の独り言や私語が目立つ」「教室を飛び出す」等の問題行動が増えてきます。

 

このような状況のお子様の場合、教育センターでの教育相談を紹介され、ADHDなど発達障害が考えられると、支援学級の情緒クラスなどを勧められるケースが多いと思います。

 

大抵の場合、年齢が上がり、成長に伴って先述したような行動は少なくなり、問題行動は起きなくなるのですが、自閉症の特性とされる「社会性の問題」「コミュニケーションの問題」「イマジネーションの問題」は大人になってもうまく適応できず、困難さや苦手さとしての問題を持ち合わせている人が多いでしょう。

 

この特性は自分では気付けないケースが多いと思います。大人になって問題行動としてしばしば起こるケースとしては、人との関わりで生じることがほとんどです。自分では気に留めない振る舞いや行動が、相手にとって不快に感じ、ストレスや恐怖心を煽るような事をしていることにまるで気付かず、指摘しても改善には結びつきません。また、人との関わりも距離感が掴めず、他者の不快感や拒絶感を実感することに極端な鈍さがあります。中学生や高校生の場合、このような問題行動が生じている人たちは周りから嫌がられ、避けられる傾向にあります。いじめや喧嘩などのトラブルはそこから発生するケースが多いと思います。

 

相手から強い指摘を受けて口論になった場合は、衝動性が抑えきれず、年齢が上がっても暴力行為を抑制できない人がいます。自然学園高等部の生徒でも、このような問題行動は時折見られます。

 

自分で自分の特性である衝動行動を理解し受け止め、どのようにしたら問題行動が起こらなくなるのかといった、自分の行動を変える努力が望まれます。その際には、本能的な特性(この場合は衝動性)はどのような場面で起こるか、どのような精神状態のときに起きやすいかを考え、その場面が起きないような行動パターンを身に着けることが社会に参加するための唯一の手段であると考えてください。以前もお話した通り、大人になれば自己責任が求められるので、社会ではいかなる場合でも暴力は犯罪です。高等学校では傷害事件になれば退学処分が相当です。

 

高等部の学校生活でも改善されないケースの人は、学校生活など社会との接点で生じたストレスが他者に対するいじめや攻撃に結びつくことが多く、嘘をつき、多動行動が強くなり、学校でのクラスメートとのトラブルや家庭での兄弟へのいじめなどの問題が生じてきます。これらは家の中で解消しないと外に向けての反社会的な行動になってしまうことがあります。問題を起こすことで注目してもらいたいという心理が問題行動の根底に潜んでいるのです。

 

特に発達障害の特性を持っている人は、「ソーシャル・スキル」が経験から身に付かず、人の気持ちを理解できないなどの認知の偏りから、問題行動や対人トラブルなど生活上のつまずきが起きやすいのです。大人になってもこのような状態が継続している人たちは珍しくなく、大人の発達障害としてメディアに取り上げられることがあるような人たちなのです。

 

学校など社会生活の不適応さを問題行動と捉えて、頭ごなしに怒り、力ずくで辞めさせる行為は大人になってからのお子様の反社会的な見方を強めると言われています。外出を禁止したり、LINEなどのSNSを禁止したりしても反抗が強くなり、問題行動を助長することになりかねません。友達との付き合い方や対応を知らないためにこのような行動を身に付けてしまったお子様は、友だちとの付き合い方を教えることで問題行動が減少するお子様だと考える必要があります。順番待ちができないお子様はルールが身に付いていないと考え、コミュニケーションでの解決を図るための適切な行動やルールを教えてあげることが必要であるということなのです。

 

一般の高等学校での人間関係のトラブルは、ほとんどがSNSを通じてのものです。自然学園高等部でも、SNSでの人間関係のトラブルの報告を受けています。不安が強くなるとSNSでのやり取りにクラスメートや担任の悪口などを書き込み、同意を求めることでその不安から逃れたいという心理が働きます。以上のような問題行動が生じやすいお子様は特に、他者に責任を転嫁し、他者を攻撃することで自分の責任を回避しようという行動に出ることが多いです。このことによって、ますますクラス内のトラブルが悪化、拡大するものです。

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