高等部:高等部通信6月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-5

2024年7月18日

5、SNSのトラブルと発達障害の関係性

 

令和6年3月に内閣府から発表になった「令和5年度青少年のインターネット利用環境実態調査」の結果では、令和5年に小学生でスマートフォンを所有している割合は67.1%。携帯電話76.9%。中学生ではスマホ92.3%、携帯68.9%。高校生ではスマホ98.9%、携帯61.9%であるそうです。そこで、インターネットで何を活用しているかというと、メールやLINE活用が最も多く、YouTube、インスタグラム、Twitter(現X(エックス))、TiKToKと続きます。以前は、ほとんどの高校生がインターネットの利用で、中学生は交通機関を利用して通学しているため緊急の連絡用という使い方でスマホを携帯していました。現在は中高生のスマホや携帯電話の保有率はこれまでで最も多くなっています。

 

このような現状をご紹介したのは、自然学園でもSNSでの生徒同士のトラブルが少なからずあるからです。一般に発達障害がある生徒の特性として、言語性の低さや一方的な伝達などによるコミュニケーションの苦手さが挙げられます。重ねて、ワーキングメモリの問題や衝動性、人の気持ちをあまり理解できないなどの特性により、メッセージ上でのやり取りで相手に対して気遣いのない表現や言葉を文章として通信してしまい、グループ内で批判を受けたり、一方的に自分の思いを押し付けることによってグループ内で引かれてしまったりすることが少なくなく、それがきっかけでLINEはずしなどのトラブルに結びつくケースも過去にありました。

 

このような特性を持った人たちは、他の生徒より遥かにSNSのトラブルが生じやすい要素を抱えています。そして興味の偏りやファンタジーを好む特性は、自分の世界に入り込みやすく、自分の狭いスマホを通したコミュニティが自分のすべてであると錯覚し、そのコミュニティから疎外されて孤立すると生きる意欲さえ失う人が増えてきています。

 

自己肯定感が低く、絶えず他者の目を気にしている人たちは、嫉妬心、猜疑心などを持ちやすく、コミュニティの自分の存在に対する不安や恐怖心から匿名で誹謗中傷を書いたり、なりすましたりする行為に至る可能性も否定できません。私はSNSという情報ツールは、このような心理特性を持った人たちの負の部分の感情を刺激しやすいコミュニケーションであると感じています。

 

生徒の多くが、小学校や中学校在学中に不登校やいじめを経験しています。そのことが継続することによって強迫性障害や統合失調症傾向、拒食過食などの2次的な情緒の混乱に悩んで医療機関に通院している人も少なくありません。学力面での問題に起因する場合もありますが、人間関係のつまずきに起因するケースが非常に多くなっています。最近の高等部の在籍生徒の実例でもSNSのやり取りの中でトラブルを起こしてしまうケースを聞くようになりました。

 

最終的に社会参加が高等部の生徒の皆さんの大きな課題になります。その課題を乗り越えるには、人との関係性の克服であり、コミュニケーションも含めたソーシャル・スキルの獲得に集約されてきます。

 

自然学園の生徒の皆さんの中には、言語性が低く自分の気持ちをうまく相手に伝えられない特性を持っている人たちが多くいます。コミュニケーションに関しても、一方的で自分の主張や言いたいことに終始して、相手の気持ちを理解しようとしないことも特徴の一つだと言えるでしょう。もともと傷つきやすく、他人に嫌なことをされたり、言われたりしたことは決して忘れません。それどころか、時折思い出してパニックになってしまうのです。フラッシュバックと言われている状況もこのようなことだと思います。

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