高等部:高等部通信6月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-1

2025年6月19日

1、はじめに

 

今年は6月10日(火)に関東甲信越地方の梅雨入りが発表されました。午後は20℃ぐらいに気温が下がり、ひんやりとした梅雨入りで4月中旬並みの陽気でした。翌日の11日(水)には南シナ海に台風1号が発生しました。台風1号の発生は統計史上5番目に遅いそうです。梅雨明け予想は7月中旬で、関東甲信越地方の太平洋側では梅雨の中休みがあるようです。梅雨の期間中は太平洋高気圧の影響で陽性梅雨と言われる雨が多く、高温が続く予報が出ていて鬱陶しいじめじめした日が続くようです。

梅雨入り前から雨模様の低気圧の日が多かったので、精神的に不安定なる生徒が例年より多かったようです。梅雨は気圧の変化に体が対応できず、自立神経が崩れ、イライラが募り精神的に不安定なりことが多い時期です。換気をこまめにしながら部屋の湿気に注意し、心の健康にも気を付けて過ごしてください。

特に1年生の中でも新しい環境になじむことに時間がかかる人たちは、自然学園という新たな環境に身を置くことで不安が高まり、人間関係でトラブルを起こしやすい時期になってきます。また、2年生に関しても、進級してようやく新しい環境にも慣れだして気が緩んでくる時期です。そして、さまざまな問題行動が頻発する時期です。

 

2、3段階のスローステップ

在籍生の中には不登校の経験がある生徒も珍しくありません。

入学の段階で毎日の登校が難しい生徒もいましたが、学年が上がるごとにクラスになじめるようになっています。スローステップを実践していくことで少しずつ家からの登校にも、環境にも慣れてきます。自分を受け入れてくれるクラスメートの存在に気が付けば、緊張して閉ざしていた気持ちが解放されてきます。「こんなことも許されるんだ」「こんな風にしても大丈夫なんだ」と周りの空気を確認しながら自問自答を繰り返し、ことわざにあるように「石橋を何度も叩いて渡りながら」自分の心がその空気に馴染んでいるように感じることが登校できるきっかけを作るのです。

不登校の期間が長い程、人や学校に対する不信感や反発心が強くなります。気持ちが頑なになっているので、大人の人の登校に対する働きかけに対して「なぜ登校しなくてはいけないの」「このままじゃいけないの」「誰も私の気持ちをわかってくれない」「分かろうとしてくれないで自分の意見だけを押し付ける」などの思いを抱いてしまった人は少なくないはずです。だから、気持ちを解放できるまで時間がかかるのです。自分の気持ちを確認し、自分のことを前向きに考えられるようになるまでは自分との格闘もあるでしょう。自分と向き合って肯定できるようになるように有効的な時間を選択することが自分の未来を作ることになります。

スモールステップとは心理学の用語としては「目標を細分化して一つずつのステップを確実に達成することで、最終的な目標へ近付ける」という目標達成のためのメソッドです。学習課題など目標達成のプロセスを細分化して、学習者の失敗を減らし、着実に進歩を促すために用いられる手法です。

不登校になると、今までの追い込まれた精神状態からは解放されるものの、周りの子どもたちからは孤立し、自分が取り残された落ちこぼれの烙印を押された気持ちになる人もいるでしょう。家族や担任も含め、直接的ではないものの圧力は相当に感じているものです。足掻けば足掻くほど袋小路に入り、先が見えない不安でいっぱいになるでしょう。

ですから、まずは「今何ができるか」「何をしなければいけないか」を現実的に整理し、優先順を付けます。その中で、今の状況でもできることを選択し、すぐに行動することが高等学校に入学を希望した生徒の皆さんのそれぞれの目標達成に繋がります。

共通した目標としては「高校を卒業すること」。つまり、74単位以上の単位を取得することにあります。通信制高校の場合はスクーリングの出席とレポートの提出になります。

今まで不登校を経験している人たちの中には、長期にわたって学校に登校できていない人たちも少なくないはずです。当然、生活習慣も乱れてくるでしょう。また、不安が強くて情緒が安定していなかった状況が続き、不登校が長引いてしまった人も少なくないでしょう。そんな人たちは入学してすぐに登校することに無理がある人もいると思います。心の不安からくる緊張など精神的な疾患はすぐには良くなるわけではありません。

そのような生徒の場合は、最初のステップからスタートできるように現状で可能な回復プログラムを組むことによってアプローチしているのです。そして、段階を踏まえてそれぞれのステップで決めた目標の到達を目指しながら次のステップに移行するメソッドになっているのです。このようなプロセスを辿れば単位の認定は可能になります。

もう一つの目標としては将来的な自立があるでしょう。自立とは社会参加です。働くためのスキルの獲得が現実的な目標になってくるでしょう。そのための大きな目標設定としては、クラスでの授業に通うことになります。少人数でもクラスの中に自分の居場所ができればソーシャルスキルの獲得の大きな力になります。ソーシャルスキルは学習性のスキルですが机上の学習で獲得できるスキルではありません。やはり、クラスメートから認められ受け入れられることで他者を気遣う意識が生まれてきます。そして、自ら他者との関係性を望むことでソーシャルスキルが育まれるのです。不登校のままでは人間関係から学ぶソーシャルスキルが未学習のままになってしまうので、人間関係の構築が実践できないままになってしまうのです。人に対しての行動規制もこのような環境からしか生まれてこないものです。

自然学園ではこのような3段階のプロセスを踏まえて徐々に登校に慣れ、学習への取り組みを学び、クラスに馴染めるアプローチを実践しているのです。

1年生にとっては、そんなクラスメートとの初めての宿泊行事がサマーキャンプなのです。グループに分かれてリーダーを決め、それぞれの役割分担のなかで協力しながら、班行動を実行していくことがグループワークの実践の中で学ぶソーシャルスキルトレーニング(SST)になるのです。皆さんは知らないうちに働くうえで求められる『協力、協働』を自分自身のスキルとして身に付けることができるでしょう。

2、3年生の皆さんは、この機会にもう一度自然学園で学ぶことの意味を考えてみてください。夏休みに企業見学会、2学期からの体育祭や「思いやり収穫祭」などの学校行事の意義を自分なりに考えて参加して欲しいと思っています。

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