『学力喪失 認知科学による回復への道筋』
2026年7月11日
著者:今井むつみ
初版:2024年9月20日
出版社:岩波書店
著書の記述によると、記憶術ように無関係な項目を一度に大量に学び、大事な能力だと思っている人たちが多くいるそうです。認知科学の研究で明らかにした知識とは、覚えるものではなく、学び手が作り上げていくものであり、知識には「死んだ知識」と「生きた知識」があるとも述べています。この著書は、その事例として、計算はできるが文章題ができない子どものことを取り扱っています。かけ算の計算の仕方は覚えても、そこだけで閉じた、断片的な計算の手続きの情報を記憶しただけでは文章題は解くことができない。かけ算の知識は、死んだ知識に近く「死んだ知識」を「生きた知識」に変えていく必要がある。必要な時に取り出せて使える知識、さらに必要な組み合わせ、拡張することで新たな知識を自分で想像できる子どもに教育することの必要性を解説しています。
文章題ができない子どもは、スキーマが想起できず、スキーマが使えないため記憶もできないが、スキーマに合う情報は、スキーマに取り込まれる形で記憶に残り、わかりにくいあいまいな文章の行間をうめることができる。ただし、スキーマが正しいわけではない。ここではスキーマが間指し、過去の経験からこういうものだ」と定型化された認識のことで、情報を効率化する役割があるそうです。スキーマの役割は、文章題や読解を読み解く、抽象的思考力や流動性推理に繋がる情報の認識にも関係しているように思います。
流動性推理のスキルが弱く、「読む」「聞く」などの凸凹が生じているお子様は、特に認知の枠組みを正しく理解することができません。ましてやASDで対人関係の苦手さやこだわりを持つなどの特徴があるお子様は「思考のくせ」が間違った方向性を示している場合が多いと感じました。そうなると、曖昧な文章の行間を埋めることができず、文章題ができないような経験の積み重ねをしていることが改めてよくわかりました。だとすると単純に勉強量を増やして知識を詰め込ませても問題が解けるようにはならないことを保護者にもご理解していただくためにも参考になる本だと思います。





