[高等部通信4月号]学園長より~可能性の扉~①

2016年4月1日

桜が満開になるころまで、朝、夜は肌寒い日が続いていましたが、深緑のすがすがしい香りが漂う季節になってきました。日中は強い日差しに初夏を感じさせる今日この頃です。

早いもので入学式が終わり、教室の情景も新しい面々に新鮮さが漂い、一か月前の卒業式もまさしく春の夢のごとくに感じられます。このようにして時は確実に過ぎ、また新しい1年が始まり、新たな思い出がそこに書き加えられ、日々は追い立てられるように、そして静かに過ぎていくのだと実感しています。

自然学園にとっても大切な1年が始まりました。今年はバンブー教室が開校して10周年目を迎える年です。高等部は平成18年の4月から1名の生徒が入学したことからスタートしました。当時は私とマンツーマンで授業に取り組んでいました。そんな教え子も大学を卒業して、現在は、社会人として企業で働いています。

学校になじめない、つまずきをかかえた子どもたちが、毎日生き生きと生活できる、居場所のあるあたらしい学校づくりに取り組んだ、あっという間の10年だったような気がしています。

公的な特別支援教育が取り組みきれていない、ひとり一人の教育的なニーズにできるだけ近づける、きめ細やかな教育サービスの提供と、その子供たちの個性や能力に応じて、自立できる取り組みを体系的に実践できるインクルーシブ教育を理念に掲げながら、10年間ぶれることなく地道に歩み続けてきました。

また今年も藤の花が満開に開花し、ここ春日部では4月26日に藤まつりが開催されました。学校の窓から見える紫色に染まった天空のアーケードが歩道の上を棚引いています。

4月26日(日)に藤まつりでは、今年も自然学園の玄関先で、生徒による模擬店を出店させていただきました。

高等部の生徒と大学部の学生の皆さんは、SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)のカリキュラムの一環として、自分たちで考え、作った商品を自分たちの手で販売し、利益を得る擬似的な起業体験を、模擬店の出店をすることで実践しました。藤祭りをご見学されているお客様にフレッシュ・バナナジュースとフルーツポンチ、インドカレーを販売しましたが、すべて予定した数は完売し、生徒、学生の皆さんも満足そうでした。

新学期も早いもので3週間が過ぎようとしています。新年度、各学年の時間割は、一人ひとりの将来的な自立を考えた実践的なカリキュラムを導入しています。卒業後の就労を視野に入れたキャリヤ学習を1年生から計画的に導入することで、漠然としていた仕事に対するイメージがより身近に感じられようになり、自分のこととして考えられることで、3年後の目標設定ができるようになります。

そして2年生からの時間割では、選択教科で金銭管理や作業実習など、実際の企業で要求されるPCの活用も含めた作業スキルの修得や、実社会で必要とされる日常マナーや金銭管理の習得などを目指しています。社会に参加するうえで、敬語や正しい言葉づかいは必ず必要になることです。そして、特例子会社であっても業務依頼や指示に対する正確な返答や、ある程度のコミュニケーションスキルは必要不可欠な、勤務するうえでの条件として提示されてくるでしょう。

3年生ではこれらに加えて、問題解決技能訓練を取り入れて、イレギュラーな問題事項やアクシデントが生じた場合に、あわてずに、的確な伝達ルートに従って情報を責任ある立場の職員に正確かつ迅速に報告することができ、柔軟な発想力で問題から生じる被害を最小限度に収めたり、未然に防ぐことができる対応力を養うSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を導入しました。

企業の就労実習やそれに基づく事前指導や実習報告会などを計画的に取り入れ、企業に要求されるスキルが体験を通して理解でき、行動として実践する意識がもてる動機づけを1年生から取り入れています。

主要教科に関しては、認知のつまずきを配慮した学習到達度にあわせたクラス分けを実践しています。生徒ひとり一人がクリアできる学習課題を提示して「わかる」「できる」の意識を積み重ね自己肯定感の向上につなげていきます。

また、ソーシャルワーカーや臨床心理士の資格を持っているスクールカウンセラーを中心に、生徒のホームルーム以外のもう一つの居場所を設けて、生徒のひとり一人の対してきめ細かいメンタルケアが行えるシステムをリソースルームとして、今まで以上に体系的により組織的に強化しました。

このような新たな取り組みを加えて平成27年度、新学期をスタートさせることになりました。より充実した内容になっているつもりです。これからも保護者の方々と連絡を密にしながらお子様の支援に全力を注ぐつもりです。今年度も変わらずのご理解ご協力の程よろしくお願い申し上げます。

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