[高等部通信4月号]学園長より~可能性の扉~②

2016年4月1日

入学式の式辞の一部を掲載します。

平成27年度 自然学園 入学式式辞

在校生、教職員一同、皆さんの入学を心からお待ちしておりました。

高等部、大学部の新入生の皆さんはこれからの学校生活に大きな期待を胸に抱きながら、同じくらいの不安な気持ちを抱えていることでしょう。

自分の気持ちにうそをつくことはよくありません。その不安な気持ちを逃げず受けとめて、これから経験する一つひとつの事柄に取り組んでください。自分のできること、または、できる範囲のことに参加し、登校を積み重ねていけばいいのです。

自然学園では、「自分の壁を乗り越えろ。」「できないことにチャレンジしよう。」「あともう少し頑張れ。」「限界を自分で決めるな」などの教育目標を生徒の皆さんに掲げる考えは一切ありません。

昔から農家の人は雨の日は農作業をお休みし、晴れの日のみ作業を行い、自然には決して逆らわない生活を営んできました。できるときにできる限りの努力をして、雨の日は潔く休みにする営みは自然学園の教育理念に通じるものがあります。

できないことは怒られてできるようになるわけではありません。余計やりたくなくなってしまうことでしょう。できないことはできない人たちの視点に立って、どのようなやり方ならばできるようになるのかを考え、提案し、できたことが力に変わる教育の実践が自然学園の教育に対する取り組み方です。

人にはみんな個性があります。できることできないことが違います。考え方が違います。また同じような考え方の人でも、立場によってものの見方やものの言い方が違ってくるのはしょうがないことです。四角のものを三角にする必要はありません。四角は四角のまま、三角は三角のまま、丸は丸のまま、それぞれの形を大切にしながら自分しか持つことができない個性を伸ばしてください。

できないことはできる人に教えてもらいながら、少しずつ周りの環境に慣れて、できることが増えていけばそれでいいのです。決して無理しないあるがままの形を受け入れた自然の姿こそ美しいものはありません。そして力強いものはありません。皆さんが入学した自然学園の「自然」とは、そんな意味を含んでいます。

皆さんの中には、なかなか中学校での学校生活になじめずに、学校に行くことができなかった生徒の皆さんがいることは知っています。いじめを受けて、大勢の人の中では緊張して何も話せなくなってしまう人もいると思います。自分のつまずきを誰にもわかってもらえず、先生やクラスメートを信じられなかった人もいるでしょう。

高等部の入学が許可された新入生の皆さんは、自分を変えようとして入学してきた、勇敢に過去の自分に立ち向かおうとしている挑戦者です。誰もがそんな人たちのことを笑う資格はありません。今まで愛を持って関わってくれた大切な人たち誰もがあなた方のことを誇らしく思ってくれているでしょう。

これから経験していく一つひとつのことが、あなたの自信になり、その自信が思い出したくない過去のいやな思い出を消し去ってくれることでしょう。学校生活のなかで失いかけた意欲をもう一度取り戻すには、学校での経験で取り戻した自信しかないのです。私たちは全力で皆さんの自信を取り戻させる支援をしていきます。

そして、その先にある目標が就労であり、自分自身の力で社会に参加して自立することであることは、それぞれの新入生が胸に秘めている思いであるでしょう。

自然学園は、バンブー教室開校して10周年を迎え、さらなる展開を考えた10年を迎える節目の年です。

新入生の生徒の皆さんは今日から本格的な学校生活の始まりとなります。

登校がはじまり、毎日少しずつ、今まで抱えていた不安が少なくなるように担任の先生をはじめ、みなさんを担当する教科の先生方に支えてもらいながら、学校生活に慣れてもらいたいと思っています。

ベストセラーになったノートルダム清心学園理事長である渡辺和子先生が著された『置かれた場所で咲きなさい』では、「置かれたところは」は、自分自身で納得できない場所であることがあります。誰しもが、人にうらやましがられながら生活したいと思っています。

人はそれぞれ違った試練を抱えて生まれてきます。育った環境が恵まれなかった人もいるでしょう。体に障害を持って生まれてきた人もいるでしょう。いじめられたり、ひとりぼっちになって息苦しさを感じながら学校生活を送っていた人たちもいるでしょう。相手に向かうと言いたいことが言えない自分自身も、文章を書くことが苦手なことも、図形の問題が解けないことも持って生まれた大切な個性なのです。

この言葉は、自分自身も含めて、その人のありのままを受け入れること、そして、そのなかに可能性を見出すことが大切なことである、と教えてくれているのです。

ですから新入生の皆さん、どうか自分の置かれた境遇や自分自身のつまずきをありがたく両手で受け止めて、その花を咲かせ、自分自身しか作れない花束にして、神にささげる気持ちを持ってください。どんなところに置かれても花を咲かせる気持ちを持ち続けようとの思いが「置かれた場所で咲きなさい」という言葉の意味です。

そして皆さんのご両親、皆さん自身が選んで入学した自然学園こそ、今皆さんが置かれた場所です。この自然学園で思いっきり学校生活を楽しんでください。のびのびと、そして元気に生活してください。その中で一つずつできることが増えてくるでしょう。そのことが皆さんにとっての生きる力になります。

「置かれた場所で咲きなさい。」

この言葉を新入生の皆さんに送らせていただきます。

平成27年4月11日
自然学園 学園長 小林 浩

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