高等部通信 新学期特別編集号 学園長ブログ-4

2023年9月10日

4、特別支援教育を必要としているお子様の就労についての現状での課題

特別支援学校の職業科の先生とお話しする機会が先日ありましたが、在籍生徒に自閉症スペクトラム傾向の発達障害がある生徒の割合が増えてきているというお話でした。企業就労を目標に置いていることで、在籍生は実習で認められることが採用に直結するため、3年間、企業が求める限定された技能を習得するための訓練や言葉づかいや振る舞いなどビジネスマナーの指導をしているものの、特性から指導が入らない発達障害傾向の生徒が生まれつつあるということでした。

特別支援教育を必要とする発達障害傾向の生徒の本質を理解して、個々のニーズや特徴を理解した支援計画や進路学習を実施し、就労に結び付けていくための指導ができる高校が全日制、定時制、通信制も含めたどの課程でも少ないことが現状であり、最も大きな課題だと思います。

2018年4月1日から通級が制度化され、ようやく高校での特別支援教育が見直されましたが、現状で期待されたような実践はできていないように思います。2015年に高等学校における個々の能力・才能を伸ばす特別支援教育モデル事業が開始され、自治体でモデル校に指定された高校は学校設定教科として「ソーシャルスキルトレーニング」や「自立活動(ライフスキルトレーニング)」や「ソーシャルスタディー」、生活向上のための「コミュニケーション」などと称された教科を導入して、彼らの将来的な自立を念頭に置いたSSTを実践する方向性を示していました。
 
このような取り組みをするのは、発達障害がある高校生にとって企業就労に必要なスキルがソーシャルスキルだと位置付けているからに他なりません。働くためにどうしても必要とされるスキルをSSTで学んでいくのです。

では、彼らに求められるソーシャルスキルとはなんでしょうか。私は企業の方々への実習のご依頼や卒業生が就職した企業への定着支援などを通して、各採用担当者から採用基準をお伺いする機会が多いのですが、どの企業も「勤怠」、「情緒の安定」、「コミュニケーション」に集約されるように思います。

まず「勤怠」とは、毎日の勤務が安定しているということです。これは家庭での生活習慣が確立していることを意味します。睡眠、食事、入浴のルーティーンが習慣化されていれば遅刻や居眠りすることもありません。毎日活気にあふれた生活を送れるはずです。

「情緒の安定」に関しては、特に精神手帳を取得されている生徒は「合理的配慮」を期待されている方々が多いとは思いますが、職場で他の職員に迷惑かけるような状況がある場合は就労自体が難しくなります。気持ちの落ち込みや不安、イライラからくる衝動的な行為はセルフコントロールできるスキルが求められます。

「コミュニケーション」に関しては、聴覚・視覚からの認知について職場で求められるレベルが基準になります。具体的に言えば、口頭だけの指示ではなく、メールや指示書など紙面での指示も含めた優位性に対する配慮はあるものの、個別での対応は期待できません。生産性を重視した職場では特別に個人に時間をかけることは効率性を落とすことになるからです。

以上のことを踏まえ、それぞれのお子様に合ったスタイルの高校を選択していくことが大切です。全日制高校でも単位制を導入している新設校などは、学力に自信のない生徒に対して中学校の復習授業や補習などを積極的に実施している学校もあります。また単位制を生かして午後の時間帯は自分の興味がある音楽や絵画などの芸術的な教科や、将来の仕事に結びつく資格などの取得を目指した講座や技術指導などを取り入れた教科などから選択し、自分自身で時間割が組めるなど、チャレンジスクール、パレットスクールも含めて単位制の特色を生かした高校があります。

重要な事は、まずはお子様の個性と中学校時代の学校生活の状況や、一人ひとりのつまずきや特性を踏まえた上でお子様が継続して登校できる高等学校を選択できるかどうかです。そのためには、説明会のみならず学校見学、授業参観、行事見学の参加が必要不可欠です。

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