[高等部通信1月号]学園長より~可能性の扉~5-1

2022年1月24日

5、発達障害がある生徒の勉強のつまずきについて

(1)ワーキングメモリについて
3学期になるとすぐに高等部3年生は1月19日(水)から25日(火)まで、高等部1、2年生は1月31日(月)から2月4日(金)まで後期学力考査があります。高等学校の場合は、この試験の結果が単位認定試験になり、卒業、進級が決定する評価の基礎点として加算されます。1月は、試験を控えてのレポート提出と試験対策授業と勉強に力を入れなければいけない時期になります。勉強があまり得意ではなく、中学校時代に中間期末テストが嫌で仕方なかった人たちの中には、試験を控えた冬休みを憂鬱に過ごしてきた人たちもいるでしょう。

高等部の生徒の皆さんは、勉強が苦手な生徒が多いと思います。テストに対する拒絶反応がある人も少なくありません。学力不振をきっかけに学校を嫌いになったり、自己肯定感が低くなったりした人もいるでしょう。また不登校に繋がった人もいるでしょう。

学習のつまずきは、読む、書く、聞くなど、情報を処理する認知の偏りに起因しています。とは言っても、視覚的な機能や聴覚的な機能が弱いということではありません。一般の人には気付くことができない、人には見えないつまずきが起因しているのです。「読む・書く」に苦手さがある人は、問題文や文章などを読んで、設問に応じた答えを解答欄に筆記することは困難を極める行為であり、課題とされる項目が「わかる、わからない」、「理解できる、できない」以前の問題です。中学生が、学力考査の前に提出を義務づけられているワークは、答えを写すだけだとしても、他の勉強は手につかない人が多いと思います。

このような人の場合、ワーキングメモリに原因があることが考えられます。ワーキングメモリとは、情報を一時的に記憶・処理する能力であり、頭の中のメモ帳の役割をしている機能です。例えば、授業で先生が黒板を使って説明を行う際も、その文字を自分のノートの書き写すには、一度頭の中のメモ帳に板書にある文字や記号を記録して、ノートにその文字や記号を書き写します。その際の頭の中のメモ帳がワーキングメモリなのです。足し算、引き算など計算の際には、数字を一度頭の中のメモ帳に記憶し、計算のルール・手順に基づいて解法し、処理されたその数字を答えとして解答欄に記入します。文章読解も、前に書いてある事柄や登場人物の行動、発言した言葉の記憶がないと文章が先に進んだ時に、書かれている内容を理解できなくなります。その際も前に書かれている文章の事柄を一度頭の中のメモ帳に残し、登場人物の行動や発言を時間軸に沿って処理するワーキングメモリが不可欠です。

このことからも分かる通り、一人ひとりの感覚的な偏りや情報を処理する認知力の凸凹を把握し、どのような覚え方なら記憶し処理しやすいのか、どのような課題を提示したら課題に取り組みやすくなるのか、また、解答欄に答えが書きやすくなるのかなどを考え工夫すれば、課題や問題に取り組めるようになります。

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