[高等部通信8-9月号]学園長より~可能性の扉~④

2018年9月18日

4、発達障害におけるキャリア教育と高等学校における通級制度化

全日制と定時制、通信制のいずれの課程でも、読み書き困難や言語障害などのある小中学生を対象とする「通級指導」の制度化を高校に導入することを検討してきた文部科学省の専門家会議は、「高等学校における通級による指導の制度化及び充実方策について」(高等学校における特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議報告)の報告書で、平成30年度の運用開始におけるロードマップを公表しました。それに先がけて平成27年に高等学校における個々の能力・才能を伸ばす特別支援教育モデル事業が開始されモデル校に選ばれた高校での通級における特別支援教育が実験的に実施されました。そして平成30年に学校教育法施行規則が一部改定され高等学校における通級指導が制度化されました。

通級指導は、通常学級に在籍する児童・生徒が原則週1~8コマ、障害に応じた補充指導などを別室で受ける制度で、平成5年度に小中学校で制度化され、対象者が18年度に学習障害(LD)などに拡大されて急増しました。報告書では、中卒者のほとんどが高校に進学する中、高校を「自立に向けた準備期間を提供できる最後の教育機関」と位置付けた上で、中学で通級指導を受けた生徒が高校でも指導を必要とする可能性があることから、高校の対象者を小中学校と同じとしています。

高等学校における通級学級での特別支援教育の内容として代表例をご紹介させていただきます。

まずは自立活動として校外体験授業を実施しています。職場等での体験授業と大学等での体験授業があり、前者は就労に求められる他者との付き合い方や社会人としての行動規範や就労におけるマナーまた相手の気持ちを考え、自分の行動に見通しを持ち、望ましい行動選択できるなどのSST(ソーシャル・スキルトレーニング)を体験的に学ぶことを目標にしています。大学進学などを希望する生徒には大学等での体験学習としてゼミや、授業体験等を通して、大学で学ぶとういうことの理解を深めるとともに、先輩たちへの情報交換や学食体験により入学後のキャンパスライフの具体的なイメージを持たせることと大学卒業後職業生活がイメージできることを目標にしています。就労や大学進学のどちらを選んだとしてもそれぞれの進路での適応し継続できることが高等学校における特別支援教育の目標になります。

1年次ではロールプレイで会話場面を設定して、答え方によっては相手の受け止めかたに違いが出ることを理解して、心地よい人間関係を築くための会話スキルを学び、2年次では職業実習の場面でのコミュニケーションでの適切な対応や言葉のやり取りについて考え、実際の実習において般化できるように繰り返し練習するなどのSSTを総合的な時間のカリキュラムに導入しているケースが多くみられます。

学習においては小学校、中学校の通級学級同様、主要教科の学び直しや「学び方を学ぶ」学習スキルアップの講座をLHR(ロングホームルーム)などに導入しながらの取り組みを考えているモデル校が多いように思います。

現状としては以上のことを実施するための教員の育成が不可欠であり、企業との連携における職業実習などこれから経験を積む課題が多いことが、今後高等学校での特別支援教育が定着するか否かの試金石になると思われます。

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