[高等部通信9月号]学園長より~可能性の扉~5

2022年9月15日

特別支援教育を必要としているお子様の就労についての現状での課題

特別支援学校の職業科の先生とお話しする機会が先日ありましたが、在籍生徒に自閉症スペクトラム傾向の発達障害がある生徒の割合が増えてきているというお話でした。企業就労を目標に置いていることで、在籍生は実習で認められることが採用に直結するため、3年間、企業が求める限定された技能を習得するための訓練や言葉づかいや振る舞いなどビジネスマナーの指導をしているようですが、特性上の理由から指導が入らない発達障害傾向の生徒が生まれつつあるということでした。

2018年4月1日から通級が制度化され、ようやく高校での特別支援教育が見直されましたが、期待されたような実践はできていないように思います。2015年に高等学校における個々の能力・才能を伸ばす特別支援教育モデル事業が開始され、自治体でモデル校に指定された高校は学校設定教科として「ソーシャルスキルトレーニンング(SST)」や「自立活動(ライフスキルトレーニング)」や「ソーシャルスタディー」、生活向上のための「コミュニケーション」などと称された教科を導入して、彼らの将来的な自立を念頭に置いたSSTを実践する方向性が示されていました。

このような取り組みは高等学校の特別支援教育は、発達障害がある高校生にとって企業就労に必要なスキルがソーシャルスキルだと位置付けているからに他なりません。働くためにどうしても必要とされるスキルをSSTとして学んでいくのです。

では、彼らに求められるソーシャルスキルとはなんでしょうか。私は企業の方々への実習のご依頼や卒業生が就職した企業への定着支援などを通して各採用担当者から採用の基準をお伺いする機会が多いのですが、どの企業も「勤怠」「情緒の安定」「コミュニケーション」に集約されるように思います。

まず「勤怠」とは毎日の勤務が安定しているということです。このことは家庭での生活習慣が確立していることを意味します。睡眠、食事、入浴のルーティーンが確立されていれば授業中居眠りすることもありません。毎日活気にあふれた学校生活を送れるはずです。「情緒の安定」に関しては、特に精神手帳を取得されている生徒は「合理的配慮」を期待されている方々が多いとは思いますが、職場で他の職員に迷惑かけるような状況がある場合は就労すること自体が難しくなります。気持ちの落ち込みや不安、イライラからくる衝動的な行為はセルフコントロールできるスキルが求められます。「コミュニケーション」に関しては、聴覚・視覚からの認知について職場で求められるレベルが基準になります。具体的に言えば口頭だけの指示ではなく、メールや指示書など紙面での指示も含めた優位性に対する配慮はあるものの、個別での対応は期待できません。生産性を重視した職場では特別に個人に時間をかけることは効率性を落とすことになるからです。

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