高等部:2月号学園長ブログ-6

2024年2月26日

6、子どもたちの問題行動について

問題行動とは、社会との接点が多くなればなるほど増える傾向があり、社会的な接点が少なければ大きな問題にならないケースは少なくありません。お子様に問題行動があると親の子育てが間違っていると言う人がいますが、子どもの持つ特性は周囲の環境から大きな影響を受けるので、家庭環境や成育歴だけが問題ではないのです。

「乱暴な言葉が多い」、「暴力をふるうことがある」、「じっとしていられない」、「上手に人の話が聞けない」、「順番を待てない」、「勝ち負けなどこだわりが強い」、「人まねができない」、「お友達と遊べない」、「遊びの仲間に入れない」、「人に謝れない」などが保育園や幼稚園に入ると指摘されるようになる問題行動ですが、この時期は健常のお子様も落ち着きのなさや衝動性は目立つものです。発達障害の傾向があるお子様方は、10歳までは特にADHDの特性である不注意性や衝動性が露呈しているお子様が多く、「暴力をふるう」、「人の嫌がることを平気で言う」、「物を投げる」、「物を壊す」、「授業に集中できない」、「授業中の独り言や私語が目立つ」、「教室を飛び出す」等の問題行動が増えてきます。

このような状況のお子様の場合、教育センターでの教育相談を勧められ、さらにADHDなど発達障害が認められた場合、支援学級の情緒クラスなどを勧められるケースが多いと思います。医療機関で服薬を必要とされたお子様の中には、薬の効果で問題行動が激変し、成績が向上するケースも珍しくありません。

大抵の場合、成長に伴って上記の行動は少なくなり、上記の問題行動は起きなくなるのですが、自閉症の特性とされる「社会性の問題」、「コミュニケーションの問題」、「イマジネーションの問題」は大人になってもうまく適応できず、困難さ、苦手さとしての問題を持ち合わせている人が多いでしょう。

この特性は自分では気付けないケースが多いと思います。大人になって人との関わりが増えることで問題行動として浮かび上がってくることがほとんどです。自分では気に留めない振る舞いや行動が、相手にとっては不快に感じ、ストレスや恐怖心を煽るような事だったとしてもまるで気付かず、指摘しても改善には結びつきません。また、人との関わりも距離感が掴めず、周囲が抱く不快感や拒絶感を実感することに極端な鈍さがあります。中学生の場合、このような問題行動が生じている人たちは周りから嫌がられ、避けられる傾向にあります。いじめや喧嘩などのトラブルはそこから発生するケースが多いと思います。相手から強い指摘を受け、口論になった場合も衝動性が抑えきれず、年齢が上がっても暴力行使を抑制できないままの人もいるのです。

高等部の生徒でも、このような問題行動は時折見られます。自分で自分の特性である衝動行動を理解し受け止め、どのようにしたら問題行動が起こらなくなるのか、自分の行動を変える努力が望まれます。その際には、本能的な特性(この場合は衝動性)はどのような場面で起こるのか、どのような精神状態のときに起きやすいかを考え、その場面が起きないような行動パターンを身に着けることが、社会に参加するための唯一の手段であると考えてください。

もう一方で、家庭生活や成育歴を通じて生じたストレスが他者に対するいじめや攻撃に結びつくことが多く、嘘をついたり、多動行動が強くなったり、学校でのクラスメートとのトラブルや家庭での兄弟へのいじめなどの問題が生じてきます。家の中で解消しないと外に向けての反社会的な行動になってしまうこともあります。問題を起こすことで「注目してもらいたい」と言う気持ちが問題行動の根底に潜んでいる心理です。これを認知の歪みと言います。認知の歪みは自己愛などのパーソナル障害に結び付くことが多く、自信の無さが前提としてあり、自分のミスや能力の低さを認めることができないため、他人に責任転嫁したり、他者と比較して自分の能力が高いと思い込み、他者を軽蔑したりすることで現実から逃げることが常態化しています。自分が人より能力があると思い込むことで自己愛を満たすのです。パーソナル障害はこれを含めた9つの分類があり、認知の歪みには多くのパターンがあることが分かります。発達過程で生じた歪みが人格形成に強く関わってきます。幼い時からの誤学習の積み重ねが問題行動の背景にあるのです。このような認知の歪みを改善するための行動を自覚し、実践し、行動改善に結び付ける治療法が認知行動療法と言って、医療だけでなく学校でも問題行動に対してスクールカウンセラーとの連携でこの治療方法を取り入れられている事例が少なくありません。

特に発達に特性を持っている人は、「ソーシャルスキル」が経験から身につかず、人の気持ちを理解できないなどの認知の偏りから、問題行動や対人トラブルなど生活上のつまずきが起きやすいのです。大人になってもこのような状態が継続している人たちは珍しくなく、大人の発達障害としてメディアに取り上げられることがあります。

学校など社会生活の不適応さを問題行動と捉えて、頭ごなしに怒り、力ずくで辞めさせるような行為は、大人になってからのお子様の反社会的な見方を強めると言われています。外出を禁止したり、ラインなどのSNSを禁止したりしても反抗が強くなり、問題行動を助長しかねません。友達との付き合い方や対応を知らないためにこのような行動を身に付けてしまったお子様と捉え、友だちとの付き合い方を教えることで問題行動が減少するお子様だと考えるようにすることなのです。順番待ちができないお子様はルールが身に付いていないと考え、コミュニケーションでの解決を図るための適切な行動やルールを教えてあげることが必要であると言うことなのです。

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