[バンブー便り12月号]学園長ブログ~可能性の扉~④

2017年1月27日

4、冬期講習苦手特訓コース(小学生)、弱点克服コース(中学生)

学習面では個々における認知のつまずきの支援が最大の課題になります。認知という情報を処理する力の特性は他者からは、なかなか分かりにくいものです。

自閉症スペクトラム症傾向があるお子様方はアスペルガー傾向のお子様方も含めて、LD(学習障害)が併存しているケースが非常に多くみられます。バンブー教室の在籍生徒では、漢字が覚えられない・英単語が覚えられない・算数・数学の概念が理解できない・黒板の字を書き写すことが苦手である・授業の説明が頭に残らず理解できない・頭に浮かんだ思いを言葉として話すことができない・長い文章を理解することができない等の学習面でのつまずきがある子どもたちがほとんどです。

ここでは、国語が苦手な子どもたちに多い、長い文章が理解できない子どもたちに対するバンブー教室の支援事例を最初にお話しさせて頂きます。

まずは小学校に上がっても文章を読むことができない一つの要因として、促音や拗音のような「目には見えない音」をどのように意識させて読むことにつなげていくかを教えていきます。「まち」と「まっち」の違いとして「まっち」は「っ」を発音しないので「っ」の音が消えたということになります。「まち」は音でいうと「まっち」より音が詰まったように聞こえます。その違いをまず意味を絵にして目で理解させます。そして音を聞いて確認し、音に合わせて記号を置くことで「っ」という音が消えてどのように発音するのかを目と耳から一致させる学習をさせます。小さな「っ」の音は小さな〇大きな音は大きな○で表します。清音はてをたたき、小さな「っ」は、「グー」のこぶしを握り音を出さないルールを作り、音で確認し、次に記号を使って目で確認し、最後に体を使った動作で表現させていきます。最終的には文字を対応させます。これが多角的な感覚を使ったLD傾向の子供たちの教え方の一つです。このことは英語学習にも容易に応用が利きます。

文章読解は、文章を読んで、正しく時制ごとに文章構成を理解する練習が必要になります。文章を読んで筆者が考え、意図する言葉のイメージなり情景と重ね合わせながら読み解いていくことを、発達障害のある子どもたちは苦手としています。そのイメージを、イメージを結び付けるパイプの役割を果たす絵カードを使いながら補っていくのです。

子どもたちの認知の偏りは子どもによって違いますが、文字や記号を理解したり、暗記する言語的視覚認知力が弱い子どもたちには文章を読み上げてあげる支援が必要となるでしょう。そして絵カードを見ながら具体的な映像でイメージをつくらせながら、ゆっくり文章を読ませていきます。内容が分からなくなったときは、口頭での説明を加えながら、子どもが理解しやすいようにリードしていきます。

次に時制ごとの絵カードを時制ごとにならべて順番を確認していきます。絵カードの対で作成した文章カードをもういちど読みながら絵カードの横に並べてマッチングさせていきます。この組みあわせた絵カードと文章のペアに時制が書かれたカードをそれぞれの組み合わせの先頭に置いていきます。

もう一度、絵カードを見ながら文章を読ませ内容の理解を促します。次に文章のみを音読させ、最後に絵カードを確認させながら黙読させていきます。
当然文章内容や文章の長さは、学年や子どもたちの読解力によって課題を選んでいきます。このような支援が文章を読み取ることが苦手な生徒に対する一つの方法であり絶対的な指導方法ではありません。

算数の計算ができないお子様は、ものを数える際の頭の中で、対象物が視覚的なイメージを保持しながら、頭の中で数詞を1,2,3,4・・・と唱えていく処理能力が必要になります。そのことがイメージできず感覚的に数の大小が判断できないお子様は、数の概念が弱いと推測することができます。そして筆算の繰り上がりのように「57+36」ならば7+6=13で10の位の1を繰り上がりとして頭に残して、次の5+3+1の演算の処理が求められる。このように繰り上がりの1を情報として保持して、同時に演算の処理を行うワーキングメモリの機能が必要になります。

このように計算ができるには数の概念とワーキングメモリの能力が必要とされるのです。たとえば『7+4』の繰り上がりの足し算の場合、「7は10に3足りない」だから「4から3とって10にする」「1の位は1が残るので11になる」ただし数の概念が弱いお子様は4を3と1に分解することができません。それならば、計算プリントをつくって、最初のカードには○を七つ並べて、解答欄に○の数を書きこませます。次のカードに○の数を見てあといくつ○があったら10になるか○の数を数えながら、実際にカードに○を書かせます。次のカードに○の数を書き込ませます。次のカードは○が7つ並んでいるカード表記のみで残りの数を解答欄に記入させ答えさせます。4とその解答欄の数が分解できるかを同じようにカードで確認していきます。10と分解した数があわせて計算できるカードを用意して数字を解答欄に記入させます。このような学習をしていくことで計算のみならず文章題もできるようになるでしょう。

 同じような指導方法は、中学生の数学でも応用が可能です。中学校に入学した子どもたちが最初につまずくことが多い課題が「絶対値」です。通常学級の子どもたちは、数学の先生の『絶対値』の説明対して、「マイナス2は左にふたつすすみます。」「プラス3は右に3つすすみます」という説明に絶対値のグラフと正負の数のイメージが結び付いて、具体的に先生の説明を理解することで数直線上のある数が判断することができるのです。

発達のつまずきのある子どもたちの場合は、具体的なイメージが湧かないので、絶対値のグラフと正負の数を結び付けて考え、理解することができないのです。

グラフを見ながら右に行くほど数が多くなることをイメージできるプリントを用意して、プリントに指示通りの数値を書き込む作業を通して、具体的なある数の大小の感覚をつかませていきます。感覚的な理解ができるようになり、絶対値のグラフを見ながらある数の数直線上の位置が理解できるイメージを結び付けるパイプとなるような視覚的なオリジナルのプリント教材を使った支援が彼らの理解には必要なのです。

イメージを結び付けるような具体的な視覚的なヒント(パイプ)を作ることで、記憶にも大きな影響を及ぼしてきます。アルファベットの「mとn」「pとq」など認知しづらい小文字などは、たとえばだれしもが記憶に残っているマクドナルドの黄色いMのマークと「m」を結び付けてあげれば、おのずと「mとn」の違いがイメージできます。このような方法で英単語や漢字を覚えさせていく方法も彼らのつまずきを補う有効な支援方法なのです。

もちろん一人ひとり子どもたちの教育的なニーズは違いますし、効果的な指導方法も違ってきます。来年度で12年目を迎える自然学園ではバンブー教室を中心に、今まで数えきれない教育的なニーズに対する教材や指導方法を模索しながら、子どもたちひとり一人にあった対応に努めてきました。100人いたら100通りの指導方法があります。その臨床事例の詰み重ねこそが、「わかる」を「できる」に結びつけて学習意欲を高めていくことになると思っています。

冬期講習では、推論する、おきかえて考える、イメージづけて覚える、などのつまずきをかかえ、低学年の基礎学習から深刻な学力不振でお悩みになっているお子様を対象にした小学生の基礎学力コースと、LDなどが理由で、教科や課題によってできることと全く取り組めないことがあるお子様方に対応できるコースとして、苦手特訓コースを設けました。中学生は弱点克服コースとして課題ごとのクラスを設けています。
ぜひこの機会にお試しいただき、新学期の総合学習コースの受講に結び付けてください。

自然学園の冬期講習がお子様の学力向上にお役に立ち、3学期の受講に結びつけていただけることを期待しています。冬休みを有意義にお過ごしください。そしていいお年をお迎えください。

自然学園学園長 小林浩

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