[高等部通信10月号]学園長より~可能性の扉~4

2021年10月11日

4、認知のゆがみについて

 思春期の子どもたちの問題行動の背景には、反抗挑戦性障害や境界性人格障害、自己愛性人格障害などが隠れていることがあります。

「人格障害」は「パーソナル障害」とも言います。パーソナル障害には、他の精神疾患を引き起こす性質があります。今までお話しした2次障害である精神疾患は、実はその背後にパーソナル障害があり、これが悪影響を及ぼす黒幕的な障害であると言われています。医療機関の診断ではなかなか見つからないことが多く、治療に至っていないケースも多いです。精神疾患は本人の自覚がないと医療機関にその症状を伝えることができないため、医師の診断が不可能なのです。

パーソナル障害は認知(ものの捉え方や考え方)、感情のコントロール、対人関係といった種々の精神機能の偏りから生じるものです。「性格が悪いこと」を意味するものではありません。

パーソナル障害の種類で「自己愛性パーソナル障害」という精神疾患があります。「自己愛性パーソナル障害」がある人は自分の能力を過大評価し、自分の業績を誇張します。自分が他者より優れている、独特である、または特別であると考えています。自分の価値や業績について過大評価する際、しばしば他者の価値や業績の過小評価も行います。

 しかし、その裏では自分に対する評価の低さがあり、常に周りを気にして評価を心配しています。そのため自分の業績を気にして自分を誇張するのです。自分は以前このくらいの給料をもらっていたとか、人が羨むような女性との付き合いがあったなど、人が聞いてもいないことを自分から周りに吹聴します。そして、さほど深い付き合いではなかったとしても、知人との仲を特別な関係と思い込み他者に自慢します。周りの人と自分を比べて他者を過小評価して馬鹿にして自分の過大評価に繋げます。このような行為は自分のコンプレックスが根底にあり、傷つきたくないという思いが過剰なまでの自己愛になっていきます。このように、できない自分を守り気持ちのバランスを維持するために認知の歪みが生じるのです。その認知の偏りが他者への攻撃性や他者を陥れようとする行為や言い訳、嘘に結び付いています。

 2次障害から生じる問題行動とはこのようなものの捉え方や考え方の歪みから生じてきているのです。その改善には、自ら、自分の認知(ものの捉え方や考え方)、感情のコントロール、対人関係といった種々の精神機能の偏りを受け止め自覚することが必要です。認知行動療法とはそのことに着目し、認知の歪みの改善を目的とした治療法の一つです。

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