高等部通信11月号 ◎学園長より ~可能性の扉~-4-1

2023年12月23日

4、第15回自然学園『思いやり収穫祭』特別講演会-1

 今年は11月4日(土)14:30から、『思いやり収穫祭』の特別講演会として『家庭で実践できるはたらく力の育て方』を自然学園学園長である私から講演をさせていただきました。中学校の特別支援学級に在籍して療育手帳を取得されている生徒の皆さんは、卒業後の企業就労を念頭に置いて特別支援学校の職業科や分校の入試を考えている人が多いと思います。10月からスタートした事前相談では、特別支援学校の職業科や分校が求める生徒像を想定し、入学を希望している生徒が「どのような心構えで入学を考えているか」を確認するような質問をされたと、受験したバンブー生から毎年のように話を聞きます。

では、特別支援学校が入試で求める生徒像とは何かと言うことになると、事前相談の動画配信で打ち出している「1.自分の健康管理ができ、毎日休まず登校して学習等に取り組む生徒」、「2.ルールやマナーを守り、周囲と協力して行動できる生徒」、「3.自分の障害や特性を理解・受容し、さらに自己を伸ばしたいという意思がある」、「4.卒業後の就労をめざし、体験授業をはじめ学校生活に意欲的に取り組める生徒」ということになります。この理想像は、企業約80社に対して行われた「理想としている人材」のアンケート結果を参考としているとのことでした。

 自然学園高等部の在籍生の皆さんは自信がなく、不安が強い人が多く、小中学校のときは情緒の混乱などによる不登校を経験している生徒も少なくありません。また、自分ルールが強く、相手の気持ちが理解できず、独りよがりに見える利己的な行動が目立つ特性を抱えている人もいます。そして、そのつまずきが見えない障害であることから周囲にも理解されず、自分でもそのつまずきに気付いていない人たちが多いのです。また、自己肯定感が低く、自己理解が進んでいないことに加え、先の見通しが苦手な子どもたちには「働くこと」の現実的な理解は経験無しには難しい課題です。自然学園高等部の在籍生や卒業生に話を聞いても、中学校の入試段階で自分の意思で自立の必要性を感じ、就職を目標に入学を目指している生徒は少ないのが現実ではないでしょうか。

 このスキルを育む教育として、文科省では、公立の小学校から高等学校を通じて10年以上前から子どもたちの社会的、職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育てる「キャリア教育」の実践を掲げています。このような状況に反して、発達障害傾向の子どもたちの受け入れ皿になっている通信制高校をはじめとした高等学校は、あまりにもそのような生徒の受け入れや就労に対する進路指導が希薄で、彼らに対するキャリア教育は全くと言っていいほど進んでいない状況です。私はこのような状況から自然学園を創立した経緯があります。

では、「はたらく力」とは、どのようなスキルなのか。どのようなことができれば企業が求める能力を満たすことができるのか。その能力を業務の遂行力だと勘違いされている人は多いと思います。仕事は入社してから覚えればいいのです。そんなことより重要なことは職場への適応力です。適応力とは、職場での自分の役割を全うする力であり、個人の自己決定力なのです。この力さえあれば、これからの人材不足を充分補って余りある能力が彼らにあると企業は考えているからです。その能力の基礎は家庭での生活で育まれる力なのです。

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