[高等部通信11月号]学園長より~可能性の扉~3

2021年11月8日

3、第8回自然学園体育祭についての報告

高等部通信9月号でもお知らせしたように、自然学園では10月10日(日)に、第8回体育祭が行われました。当日は、曇りがちの天候でしたが、徐々に雲の切れ間から日差しが差し込み秋のさわやかな天気になりました。天気予報どおり、11時ぐらいには雨がぱらつきましたが、すぐに止み、日差しが戻りました。昨年同様、3密に配慮した特別プログラムで臨んだ体育祭でしたが、予定通りのプログラムを力いっぱい行うことができました。午前中に限られたプログラムではありましたが、生徒の皆さんが力いっぱいグランドを走る姿を見ることができました。自然学園らしさを十分発揮できた体育祭であったと自負しています。また生徒の皆さんもその期待に応えてくれました。

自然学園の体育祭に参加するまで、運動会、学校の体育の授業が嫌いな子どもたちは、勝ち負けにこだわりパニックになったり、協調運動など感覚的なつまずきがあり粗大運動が苦手で運動会や体育の授業で失笑を買ったり、チームが負けた責任をかぶせられたり、動きが遅れたり周りに合わせられなかったりして教員から注意を受けたりした負の記憶がある人たちが多いと思います。また感覚過敏が強い人たちは、スピーカーから流れる音楽や大声、ピストルの音など耐えることができない環境が運動会には揃っています。

自然学園の体育祭では、勝ち負けのこだわりを少しでも少なくするために障害物競走を取り入れ、脚力だけではない勝ち負けの要素を付加しました。また、その際のジャンケンも負けた感を強くもたないために旗上げジャンケンを導入するなど3密を防ぐ工夫以外にも細部にわたり考えられるだけの工夫を凝らしました。

自然学園の体育の授業では、できないことをできるようにする一人ひとりのつまずきに応じた課題を克服する支援から始めていきます。体育祭では、なるべく次の動作がしやすいような指示を具体的に提示することに気をつけ、認知的なつまずきをカバーしていきます。勝敗よりも競技に参加する楽しさが実感できるような合理的配慮を取り入れていきます。体を動かすことや小中学校の時代に体育の授業を苦手としていた人も、精一杯我を忘れて競技に打ち込む生徒の姿に感動しました。

どの生徒もチームワークを考えて、チームのメンバーと歩調を合わせ、高ぶる気持ちを抑えながら力を調整することができていたように思いました。「大玉ころがし」も「台風の目」も大玉や棒をうまくコントロールしながら、スピーディーに操作するコツを練習で身に付けているようで、速く走ること、操作することの同時処理に苦心しながらも、どのチームも危なげなく、しかもすばやく観客席の前を駆け抜けていきました。

障害物競走、リレー走に参加を申し出てくれた選手の皆さんは、誰もが順位に関係なくゴールを駆け抜けるとガッツポーズを作っていました。この姿こそ私が考えた体育祭に参加する生徒の理想の姿です。ガッツポーズは、自信のくじけそうな気持ちに打ち勝った証です。相手との勝ち負けではなく、自分に負けないことを目標に全力を出し尽くすことが、体育祭を通して皆さんに経験してほしかったことです。皆さんはその期待に十分応えてくれました。そして順位に関係なく声援を送り続けていた他の生徒の皆さんにも感激しました。最後まであきらめない、自分に負けない、そんな生徒の気持ちが見ている人たちにも十分伝わった体育祭でした。勝ち負けにこだわりトラブルが起きたり、気持ちが不安定になり、投げやりな態度を見せたりした生徒は一人もいませんでした。コロナ禍での開催をご理解いただき、大変多くのお客様に最後までご声援していただいたことに、この場を借りてお礼いたします。

今までの経験が集大成した素晴らしい体育祭であったと思っています。来年は新型コロナウイルス感染症も終息し、今まで通りの体育祭が実施できることを祈っています。

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