[高等部通信12月号]学園長より~可能性の扉~4

2021年12月9日

4、第13回自然学園思いやり収穫祭(特別企画学園長講演会)の報告
『社会にでたら求められる5つのルール~家庭でもできるキャリア教育~』

11月6日(土)から始まった第13回自然学園『思いやり収穫祭』の初日にあたる6日(土)の午後2時から、特別企画として学園長講演会を開催しました。保護者の方々の関心に沿い、発達障害がある人たちの社会参加をテーマに、将来的な自立にはどのような社会的スキルが必要とされるのか、またキャリア教育として就労できるスキルを育むために家庭ではどのような取り組みやお子様との関わり方が必要なのかをお話しさせていただきました。

まず、社会に出たら求められる5つのルールとして「➀言葉遣いに気を付けよう」「②あいさつを忘れずにしよう」「③言い訳をしない」「④人の悪口を言わない」「⑤自分の気持ちをコントロールすること」を挙げました。最近の特例子会社のような障害者雇用を推進する職場では、グループワークでの業務が多くなっています。「協働」を余儀なくされる業務ではチームワークの柱としてコミュニケーションや責任感ある役割の遂行が基盤とされるでしょう。組織に帰属するうえで「言葉遣い」や「挨拶の励行」は絶対条件であり、これなくしては人間関係ができず、コミュニケーションに至りません。人間関係はお互いに認め合い、尊敬することを基礎に成り立ち、「正しい言葉遣い」や「挨拶の励行」は社会人としてのマナーです。このことがしっかりできることにより社会、企業など組織に初めて受け入れてもらうことができるのです。

そして組織が機能するためにはコミュニケーションが必須であり、業務遂行においては自己責任が原則です。組織におけるコミュニケーションの基本は「報・連・相(ほうれんそう)」であり報告、連絡、相談が欠かせない要素になります。ミスを犯した場合には、自分のミスを潔く認め、速やかに犯したミスを上司に報告、関連部署に連絡し、その対処を相談することが組織の原則とされています。最もやってはいけないことの一つとして自らのミスをあいまいにして隠そうとする行為と、言い訳をして最悪の場合、嘘をつき、人に責任を擦り付ける行為です。「言い訳」や「人の悪口を言わないこと」は組織の中での信頼関係の構築に欠かせない要素になります。

以上の5つのルールはアスペルガー症候群、自閉症スペクトラム障害やADHDなどの傾向がある、発達障害がある人や人格障害など2次的な障害などがある人には実行するのが非常に難しいことなのです。挨拶は人を意識して気遣う気持ちや周囲を洞察する視空間のワーキングメモリなどの認知のつまずきのある人にとっては非常に難しいのです。ADHDなどの障害は不注意性に関係していて、パソコン操作など一つのことに集中してしまうと周りに注意が向かなくなり挨拶を疎かにしてしまうことは日常茶飯事であり、自身ではほとんど意識していません。相手がどう思おうと関係ないのです。考え事や他に気にすることがあるときも同様です。他者のことに興味がないので相手に合わせた声掛けもできません。言葉遣いも組織上の序列に従い気を配らせて正しい敬語を使うことに労力をかける気がないのです。またその必要性を感じていない人たちなのです。組織の中で自分が支えられているという意識が皆無なのです。しかも不適切に自己評価が高く、自己愛が強いので自分は人より優秀で特別な存在だと考えている人が少なくないのです。そんな考えの人が失敗を犯してしまった場合にはなかなかその失敗を認めることができません。謝罪ができない人も同じ理由です。それどころか人の悪口を日頃から言うことで自己愛を高めているので、言い訳をすることが癖になり、失敗を人のせいにし、人を攻撃することで自分の失敗をあいまいにしようとする回避的な心理が働くのです。

このような誤った考えや行動が固定化されてしまうと、反抗挑戦性障害やパーソナリティ障害などを背景に反社会的な行動を繰り返ししまう人もいます。鬱や強迫性障害、統合失調症のように情緒が混乱して、不安が強く精神的に不安定になる人もいます。そのため職場では自分自身で自分の精神状態を把握してコントロールすることが求められてきます。精神的に息が詰まる前に休息をとることや服薬することで、社内での精神的な安定を図ることが求められています。

そのような意味でテーマである5つのルールをご提示させていただき、そのルールを守れるようになるためにご家庭で取り組んでいただきたいキャリア教育と、お子様との関わり方を具体的にお話しさせていただきました。

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