高等部通信2月号 学園長ブログ~可能性の扉~-5

2023年2月24日

5、子どもたちの問題行動について

 

問題行動とは、社会との接点が多くなればなるほど増える傾向があり、社会的な接点が少なければ大きな問題にならないケースは少なくありません。お子様に問題行動があると親の子育てが間違っていると言う人がいますが、問題行動に至るようなお子様の特性に大きな影響を与えるのは周りの環境であり、家庭環境や成育歴だけが問題ではないのです。「乱暴な言葉が多い」「暴力をふるうことがある」「じっとしていられない」「上手に人の話が聞けない」「順番を待てない」「勝ち負けなどこだわりが強い」「人まねができない」「お友達と遊べない」「遊びの仲間に入れない」「人に謝れない」などが保育園や幼稚園に入ると指摘されるようになる問題行動ですが、この時期は健常のお子様も落ち着きのなさや衝動性は目立つものです。

発達障害の傾向があるお子様方は10歳までは特にADHDの特性である不注意性や衝動性が露呈しているお子様が多く、「暴力をふるう」「人の嫌がることを平気で言う」「物を投げる」「物を壊す」「授業に集中できない」「授業中の独り言や私語が目立つ」「教室を飛び出す」等の問題行動が増えてきます。

このような状況のお子様の場合、教育センターでの教育相談を勧められ、ADHDなど発達障害が認められた場合、支援学級の情緒クラスなどを勧められるケースが多いと思います。医療機関で服薬を必要とされたお子様の中には薬の効果で問題行動が激変し、成績が向上するケースも珍しくありません。

大抵の場合は年齢が上がり、成長に伴って先述したような行動は少なくなり、問題行動は起きなくなるのですが、自閉症の特性とされる「社会性の問題」「コミュニケーションの問題」「イマジネーションの問題」は大人になってもうまく適応できず、困難さや苦手さとしての問題を持ち合わせている人が多いでしょう。

この特性は自分では気付けないケースが多いと思います。大人になって問題行動としてしばしば起こるケースとしては、人との関わりで生じることがほとんどです。自分では気に留めていなかった振る舞いや行動が、相手にとっては不快で、ストレスや恐怖心を煽るような事だとまるで気付かず、指摘しても改善には結びつきません。また、人と関わる際も距離感が掴めず、他者の不快感や拒絶感を実感することに極端な鈍さがあります。中学生の場合、このような問題行動が生じている人たちは周りから嫌がられ、避けられる傾向にあります。いじめや喧嘩などのトラブルはそこから発生するケースが多いと思います。年齢が上がっても、相手から強い指摘を受けて口論になった場合は、衝動性が抑えきれず暴力行為を抑制できない人もいます。

高等部の生徒でも、このような問題行動は時折見られます。自分で自分の特性である衝動行動を理解し、受け止め、どのようにしたら問題行動が起こらなくなるのか、自分の行動を変える努力が望まれます。その際には、本能的な特性(この場合は衝動性)が「どのような場面で起こるか」、「どのような精神状態のときに起きやすいか」を考え、その場面が起きないような行動パターンを身に着けることが社会に参加するための唯一の手段であると考えてください。

家庭生活や成育歴を通じて生じたストレスが、他者に対するいじめや攻撃に結びついたり、嘘をつき多動行動が強くなったり、学校ではクラスメートとのトラブルへ、家庭では兄弟へのいじめなどの問題として生じてきます。家の中で解消しないと外に向けての反社会的な行動になってしまうことがあります。問題を起こすことで注目してもらいたいという気持ちが問題行動の根底に潜んでいるからです。これを「認知の歪み」と言います。

「認知の歪み」は自己愛などのパーソナル障害に結び付くことが多くあります。自分への自信のなさがあり、その一方で、自分のミスや能力の低さを認めることができないため、他人に責任転嫁したり、他者と比較して自分の能力が高いと思い込み他者を軽蔑したりすることで現実から逃げることが常態化しています。自分が人より能力があると思い込むことで自己愛を満たすのです。

パーソナル障害はこれを含めた9つの分類があり「認知の歪み」には多くのパターンがあることがわかります。すべて発達過程で生じた歪みが人格形成に強く関わってきます。幼い時に抱いた間違った考え方から生じる誤学習の積み重ねが問題行動の背景にあるものです。このような「認知の歪み」を改善するための行動を自覚し、実践し、行動改善に結び付ける治療法が認知行動療法と言います。医療だけでなく学校でも問題行動に対してスクールカウンセラーとの連携でこの治療方法を取り入れている事例が少なくありません。

特に発達に特性を持っている人は、「ソーシャルスキル」が経験から身につかず、人の気持ちを理解できないなどの認知の偏りから問題行動や対人トラブルなど生活上のつまずきが起きやすいのです。大人になってもこのような状態が継続している人たちは珍しくなく大人の発達障害としてメディアに取り上げられることがあるような人たちなのです。

学校など社会生活の不適応さを問題行動と捉えて、頭ごなしに怒り、力ずくでやめさせる行為は、大人になってからのお子様の反社会的な見方が強まると言われています。外出を禁止したり、LINEなどのSNSを禁止したりしても反抗が強くなり、問題行動を助長することになりかねません。この場合、友達との付き合い方や対応を知らないためにこのような行動を身に付けてしまったお子様と捉え、友だちとの付き合い方を教えることで問題行動が減少すると考えることが大事なのです。

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