高等部通信2月号 学園長ブログ~可能性の扉~-6

2023年2月27日

6、サードステージ、サードプレイスという考え方について

 

昨年の12月3日(土)にNHKスペシャル「キラキラムチュー~発達障害と生きる~」がテレビで放映されていました。無類の数字好き、道路を愛しすぎる少年、「乗り鉄、撮り鉄」の鉄道マニアなど何人かの発達障害の子どもたちにフォーカスして密着取材した様子が放映されていました。自分の好きなことに没頭している発達障害のある子どもたちのキラキラとまぶしいくらいに生き生きとしている子どもたちの姿が画面からも感じられました。「発達障害の子ども支援」の最新の研究で注目されているのが、大人から見て価値のないものでも、子どもが“好き”ならば、それに夢中になる時間を作ることが大切であり子どもたちの成長に必要なことであるという考えです。

番組を通じて、今の時代に必要な生き方や子育てのヒントを考えていくことが番組の意図になっているようです。自分の好きなものである趣味を続けていくことで自己肯定感が高まり、交流関係の広がりとともに社会との繋がりが生まれ幸せになる。嫌なものを我慢して押し付けることから生じる精神的な負担で2次的な障害につながるより、好きなものをやっていいよと後押しする社会や親が、人間の歪みをなくすことに効果的であるとのことでした。そのためにも、「サードステージやサードプレイスという居場所が必要になる」と、今月の『おすすめ図書』で紹介させていただいた『学校の中の発達障害』の著者である本田秀夫先生が出演してお話ししていました。

学校での困りごとを解決するには、親と教師の連携が欠かせません。今月号で紹介させていただいた『おすすめ図書』の著者である本田秀夫先生の著書では、困りごとが起きた時に「親ができること」と「先生ができること」をそれぞれ紹介し、互いの立場や気持ちを理解していくことで、子どもへのサポート法も見出せると記されています。

例えば、発達障害のある子が何度も教室を飛び出してしまう場合、教師はまず教室を飛び出す理由を考える必要があります。そして、「子どもが立ち歩いてから対処するのではなく、立ち歩きを予防する『工夫』をすることが重要だ」とのことです。発達障害がある子どもたちは勉強が苦手な生徒ばかりではなく、認知の凸凹が起因して授業に参加することに困難さが生じている子どもたちも多くいます。そのことが自己肯定感を下げる要因になっていて、それを周りに気づいてもらえないことで勉強自体を放棄してしまうことに繋がっている子どもたちが少なくないのです。

立ち歩きを予防するための『工夫』をすることで、子どもは最初から自分に合ったやり方で学習でき、「自分はダメだ」と感じる無益な失敗体験をしないで済むと著者は説いています。子どもが失敗してから「対策」を取るというのは、やむを得ない手段です。対策ももちろん必要ではありますが、それ以前に、子どもが何度も失敗を繰り返すことなく、その子らしい育ち方をしていけるように、配慮してほしいとも語っています。そしてそのために役立つのが、「ユニバーサルデザイン」「合理的配慮」「特別な場での個別の教育」という3層構造の支援だと言っています。

学校の中の発達障害「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたちには、まずは、指導が口頭のみなど画一的なものになってはいないかチェックし黒板に指示を書いて示したり、手本を見せたりするなど、子どもたち全員が分かりやすい「ユニバーサルデザイン」による指導を意識し、学習環境を整えていきます。

それでも、教室から飛び出してしまう場合は、セカンドステージである「合理的配慮」が必要で、読むのが苦手というストレスから教室を飛び出してしまう子にはパソコンや音声読み上げソフトで情報を理解しやすくするなど、個別の配慮を行っていく必要があるとしています。

合理的配慮をしても学習に繋がりにくい場合は、子どもに合った学習環境を提供すべく、保護者と共に通級指導教室や特別支援学級、特別支援学校などといったサードステージでの教育を検討していくとよいとされています。ここで取り上げられているサードステージとはどんなことなのかについて少し触れたいと思います。

お問い合わせはこちら