[高等部通信2月号]学園長より~可能性の扉~3

2022年2月14日

3、人間関係のトラブルについて

問題行動とは、社会との接点が多くなればなるほど増える傾向があり、社会的な接点が少なければ大きな問題にならないケースは少なくありません。お子様が問題行動を起こすと「親の子育てが間違っている」と言う人がいますが、お子様の置かれた環境によって問題行動に至るお子様の特性は大きな影響を受けるので、家庭環境や成育歴だけが問題ではないのです。

「乱暴な言葉が多い」「暴力を振るうことがある」「じっとしていられない」「上手に人の話が聞けない」「順番を待てない」「勝ち負けなどこだわりが強い」「人の真似ができない」「お友達と遊べない」「遊びの仲間に入れない」「人に謝れない」などが保育園や幼稚園に入ると指摘されるようになる問題行動ですが、この時期は健常のお子様も落ち着きのなさや衝動性は目立つものです。発達障害の傾向があるお子様方は10歳までは特にADHDの特性である不注意性や衝動性が露呈しているお子様が多く、「暴力をふるう」「人の嫌がることを平気で言う」「物を投げる・壊す」「授業に集中できない」「授業中の独り言や私語が目立つ」「教室を飛び出す」等の問題行動が増えてきます。

このような状況のお子様の場合、教育センターでの教育相談を勧められ、ADHDなど発達障害が認められた場合、支援学級の情緒クラスなどを勧められるケースが多いと思います。医療機関で服薬を必要とされたお子様の中で薬の効果で問題行動が激変し、成績が向上するケースも珍しくありません。

大抵の場合、成長に伴って上記の問題行動は起きなくなるのですが、自閉症の特性とされる「社会性の問題」「コミュニケーションの問題」「イマジネーションの問題」は大人になってもうまく適応できず困難さ、苦手さとしての問題を持ち合わせている人が多いです。

この特性は自分では気づけないケースが多く、大人になって問題行動としてしばしば起こるケースもあります。自分では気に留めない振る舞いや行動が、相手に対して不快感を与え、ストレスや恐怖心を煽るような事していることにまるで気づかず、また、大抵の場合指摘しても改善には結びつきません。人との距離感が掴めず、他者の不快感や拒絶感を実感することに極端な鈍さがあります。中学生や高校生の場合、このような問題行動が生じている人たちは周りから嫌がられ、避けられる傾向にあります。いじめや喧嘩などのトラブルはそこから発生するケースが多いと思います。相手から強い指摘を受け、口論になった場合、衝動性が抑えきれず、年齢が上がっても暴力行為を抑制できない人がいます。自然学園高等部の生徒でもこのような問題行動は見られます。自分で自分の特性である衝動行動を理解し受け止め、どのようにしたら問題行動が起こらなくなるのか、自分の行動を変える努力が望まれます。その際には、本能的な特性(この場合は衝動性)はどのような場面で起こるか、どのような精神状態の時に起きやすいかを考え、その場面が起きないような行動パターンを身に着けることが、社会に参加するための唯一の手段であると考えてください。以前話した通り、社会ではいかなる場合でも暴力は犯罪です。高等学校では傷害事件になれば退学処分が相当です。

高等部の学校生活でも改善されないケースの人は、学校生活など社会との接点で生じたストレスが他者に対するいじめや攻撃に結びつくことも多く、嘘をつき多動行動が強くなり、学校でのクラスメートとのトラブルや家庭での兄弟へのいじめなどの問題が生じてきます。家の中で解消しないと反社会的な行動になってしまうことがあるのです。問題を起こすことで注目してもらいたいという気持ちが問題行動の根底に潜んでいる心理です。

特に、発達に特性を持っている人は、「ソーシャルスキル」が経験から身につかず、人の気持ちを理解できないなどの認知の偏りから問題行動や対人トラブルなど生活上のつまずきが起きやすいのです。大人になってもこのような状態が継続している人たちは珍しくなく、大人の発達障害としてメディアに取り上げられることがあるような人たちです。

学校など社会生活の不適応さを問題行動と捉えて、頭ごなしに怒り、力ずくで辞めさせる行為は、大人になってからのお子様の反社会的な見方を強めると言われています。外出を禁止したりラインなどのSNSを禁止したりしても反抗が強くなり、問題行動を助長することになりかねません。必要なのは頭ごなしに叱ることではなく、このような行動は友達との付き合い方や対応を知らないために身に付いたものとして捉え、友だちとの付き合い方を教えることで問題行動が減少すると考えることです。順番待ちができないお子様はルールが身に付いていないと考え、コミュニケーションでの解決を図るための適切な行動やルールを教えてあげることが必要であるということなのです。

一般の高校生の高等学校での人間関係のトラブルは、その内のほとんどがSNSを通じてのものです。自然学園高等部でもSNSでの人間関係のトラブルの報告を受けています。不安が強くなるとSNSでのやり取りにクラスメートや担任の悪口などを書き込み、同意を求めることでその不安から逃れたいという心理が働きます。以上のような問題行動が生じやすいお子様は特に、他者に責任転嫁し、他者を攻撃することで自分の責任を回避しようという行動に出ることが多いです。このことによってますますクラス内のトラブルが悪化、拡大するものです。

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