[高等部通信2月号]学園長より~可能性の扉~5

2022年2月21日

5、SNSのトラブルと発達障害の関係性

平成30年2月、内閣府から発表になった平成29年度青少年のインターネット利用環境実態調査の結果では、平成29年に小学生でスマホを所有している割合は23%、携帯は5.4%、中学生のスマホは54.6%、携帯は2.8%、高校生ではスマホは94.1%、携帯は1.0%だそうです。そこで、インターネットで何を活用しているかと言うと、中学生の84.1%、高校生の92.3%がSNSなどのコミュニケーションツールであり、動画視聴、音楽視聴、ゲームの利用を圧倒しています。このように、高校生に関してはほとんどの生徒がスマホを保有し、インターネットを利用しています。

このような調査をご紹介したのは、自然学園でもSNSでの生徒同士のトラブルが少なからずあるからです。一般に発達障害がある生徒の特徴として、言語性の低さや一方的な伝達などによるコミュニケーションの苦手さが挙げられます。重ねてワーキングメモリの問題や衝動性、人の気持ちをあまり理解できないなどの特性が、メッセージ上のやり取りで気遣いのない表現や言葉、または一方的に自分の話したい内容を送ってしまうことに繋がり、グループ内で批判を受けたり、引かれてしまったりすることが少なくないのです。それがきっかけで「グループはずし」などのトラブルに結びつくケースも過去にありました。

このような特性を持った人たちは、他の生徒より遥かにSNSのトラブルが生じやすい要素を抱えています。先述した事例のような子どもたちは、興味の偏りやファンタジーを好む特性から自分の世界に入り込みやすい特徴があります。つまり、自分の狭いスマホを通したコミュニティーが自分のすべてであると錯覚し、そのコミュニティーから疎外され、孤立すると生きる意欲さえ失う人が増えてきているのです。SNSに関するトラブルは現代の子どもたちが生きている社会をよく表しているように思います。

自己肯定感が低く、絶えず他者の目を気にしている人たちは、嫉妬心、猜疑心などを持ちやすく、コミュニティー内での自分の存在に対する不安や恐怖心から匿名で誹謗中傷を書いたり、なりすまし行為に至る可能性も否定できません。私はSNSと言う情報ツールはこのような特性を持った人たちの負の部分の感情を刺激しやすいコミュニケーションであると感じています。

自然学園に通う生徒のほとんどは、小学校や中学校在学中に不登校やいじめを経験しています。そのことが継続することによって強迫性障害や統合失調症傾向、拒食過食などの2次的な情緒の混乱に悩んで医療機関に通院している人も少なくありません。学力面での問題に起因する場合もありますが、人間関係のつまずきに起因するケースが非常に多くなっています。

最終的に、社会参加が高等部の生徒の皆さんの大きな課題になります。その課題を乗り越えるには、人との関係性の克服であり、コミュニケーションも含めたソーシャルスキルの獲得に集約されてきます。

東京都教育委員会・神奈川県教育委員会が「青少年のネット利用実態把握を目的とした調査」を実施した調査だとスマホなどを通じたネットの利用時間は、平日では1~3時間が多くなっているということでした。スマホの利用時間帯は、東京都の高校生の調査では、22時台・23時台・24時台に集中しており、スマホで夜更かしをしている実態があるということです。また、ネット上の人間関係・対人トラブルでは、「ネット上で嘘を広められた」「LINE上で自分の知られたくない情報が流された」「写真を勝手に公開された」「入っていないグループトーク内で自分の悪口を言われた」など、プライバシーや対人関係を心配している高校生が多いようです。

自然学園の生徒の皆さんの中には、言語性が低く自分の気持ちをうまく相手に伝えられない特性を持っている人たちが多くいます。コミュニケーションに関しても、一方的で自分の主張や言いたいことに終始して相手の気持ちは理解しようとしないことも特徴の一つだと言えるでしょう。もともと傷つきやすく、 他人にされた嫌なことや言われたことは決して忘れません。それどころか、時折思い出してパニックになってしまうのです。フラッシュバックと言われている状況もこのようなことだと思います。

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