[高等部通信3月号]学園長より~可能性の扉~③

2018年3月27日

『平成二十九年度 自然学園卒業式 式辞』

本日巣立ちの日を迎えた卒業生の皆さん卒業おめでとうございます。 
さて、今、皆さんに手渡した自然学園の卒業証書は、在籍中に履修した全ての学習を修了したという証だけではなく、卒業生の皆さんが社会に参加するうえで必要なスキルに関しても卒業認定を許可できる高い社会性を育んだ証になるものです。私たちは自信を持ってあなた方が巣立つ姿を見送ることが今日できます。こんな気持ちを抱かしてくれた卒業生の皆さんを愛しく思っています。卒業生の皆さんにお渡しした一人ひとりの卒業証書にそんな思いを込めました。

 『僕たちは自分で自分を決定する力を持っている。だから誤りを犯すこともできる。しかし僕たちは自分で自分を決定することができる。だから誤りから立ち直ることもできるのだ』

これは吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」の一節です。この本は1937年に出版され昨年80年の時を経て再版され100万部を突破した現在も大ベストセラーになっている作品です。主人公のコペル君は自分がいじめられることが怖くて友達を裏切ってしまった罪悪感に悩んでいた時におじさんがコペル君に送った言葉です。いじめを見て止めることや告発する勇気がなく、やがてはいじめに加担してしまう経験がある人は卒業生や在校生の皆さんにも多くいることだと思います。そしてここにいるほとんどの人がいじめられた経験があるでしょう。このコペル君の行動こそいじめがなくならない本質です。正しいことを正しいと言える勇気、自分の利害を超えて正しい行動ができることは、人としてどう生きるかと言う問いかけを私たちに投げかけている本です。

 自然学園の在籍生の皆さんは人との関わりが苦手な人たちが多いと思います。積極的に関わりを持って人から嫌がられてしまう人と人の関わりを避けてしまう傾向がある人といるでしょう。どちらの人も人から嫌われている不安やからかわれることなどからいじめを受けた経験を体験している人たちです。人は残念なことに本能的に自分を守るために、いじめに加担する行為や仲の良い友人を裏切ってしまうような行動をとることがあります。過去につらい経験を持っている人こそその行動が強くなると私は考えています。
だからこそ周りに受け入れられる行動を絶えず意識をして、かんたんな状況になったとき立ち止まって考え反省する習慣をつけることが大切です。
そのときに自分の間違いに気づくこと自分の過ちを犯しやすい短所や性格を理解し、自らのつまずきを受け止める気持ちが大切になります。
そしてこのようなことが少なくなるためのどうすればよいかと自分の行動が間違っていた時の対処法を日ごろから身に着けておくことが大切です。そのためのソーシャルスキルとして求められることが人の助けを求められることと謝罪できるコミュニケーション力です。

 『僕たちは自分で自分を決定する力を持っている。だから誤りを犯すこともできる。しかし僕たちは自分で自分を決定することができる。だから誤りから立ち直ることもできるのだ』

と言うこの著書でおじさんが主人公のコペル君に言った言葉に集約されています。卒業生の多くの皆さんは在籍中に人間関係のトラブルで担任の先生方に少なからず迷惑をかけてきました。自分がいじめに加担していることや自らの行為に嫌な思いをしているクラスメートがいることに気付かず、自分は正しいと思っていた人、また自分の行動に非があるにもかかわらずまわりからいじめられたと他者の非難をしている人が多くいました。そのことが皆さんの直さなければならない欠点です。

自然学園は皆さんに社会に出て困らない社会的なスキルを学ばせることに力を入れています。そのために一人ひとりの障害に向き合う勇気を育ませることが必要になってきます。社会に受け入れてもらえることは、自分が社会に受け入れてもらいたいと意思を明確に相手に伝えることから始まります。その思いが一方的にならないためにも、自分自身でじぶんのつまずきを素直に認めることが大切です。それには勇気が必要です。
 
誰でもそうですが自分の欠点を素直に認めることができません。その欠点を指摘されるとほかの誰かを批判し、やり方や環境のせいにして自分を守ろうとします。中には自分自身で自分の欠点に向き合うこともしない癖に自分の障害を言い訳にして対応の悪さを批判するような人もいます。

 自分でやられて非常に傷ついたことを立場が違えば平気で人に同じことをやるような人になってほしくありません。コペル君と同じように絶えず悩み、疑問を持ち、間違えを素直に認め行動に移せる人になってください。皆さんだったらきっとできるはずです。このことを卒業する皆さんに贈る最後の言葉とさせていただきます。

 最後になりましたが、保護者の皆様にお慶びを申し上げます。本日は本当におめでとうございます。お子さんは人生において最も大切な時期に入ります。楽しみの多い反面、保護者として心配されることも多いかと存じます。皆様が手を差し伸べる前に、お子さんが夢に向かう姿をどうぞあたたかく見守り、お子様を信頼し、一人で問題を解決する姿を陰からそっと支えてください。そして家庭では笑顔の花をたくさん咲かせて下さい。今のお子様方ならもがき苦しみながら必ず一人で解決できるはずです。
 
これまでいただきましたご厚情に深く感謝いたしますと共に、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 さあ、卒業生の皆さん。羽ばたきの時です。胸を張って、笑顔で飛び立ってください。自信をもって堂々と歩んでください。
ご卒業おめでとうございます。
 

 平成三十年三月四日
        自然学園学園長  小林 浩

お問い合わせはこちら