[高等部通信3月号]学園長より~可能性の扉~2

2022年3月17日

2、コロナ禍における発達障害傾向の生徒の現状

2020年からの2年間は、コロナ禍における休校や夏休みの短縮、学校行事の縮小など予定の変更などが大きなストレスになる発達障害傾向の生徒の皆様にとっては大きな精神的負担が強いられた年だったようです。

ここのところ増加傾向が止まらない不登校児童の問題もコロナ禍での生徒の状況がたびたび話題として取り上げられました。平成26年度から小中学校の不登校の生徒数が文科省から発表される度に最多人数を更新しています。平成18年度の調査方法の改定で飛躍的に増加しました。平成28年度の教育機会確保法成立以降も飛躍的な増加の一途をたどっています。令和2年度の文部科学省の統計では小学校、中学校、高等学校いずれも昨年比を大きく上回っていて小学校の増加率が目を引きました。また不登校の割合では圧倒的に中学生の割合が高い結果でした。無気力や不安をはじめ、家庭の問題を除いた学校にまつわる不登校の理由やきっかけとして、人間関係のトラブルと学力不振が挙げられていました。

今年度の高等部の受験生の中に中学校時代に不登校を経験している人たちが多いこともこのことが起因していると思っています。

令和3年度のコロナ禍での不登校の統計はまだ発表されていませんが、令和2年度を大きく上回ることは間違いないでしょう。コロナ禍で不登校が多くなる理由として2つの理由が挙げられています。まず、一つは4月からの新学期から学校が休校になり、クラスでの人間関係がうまく構築できないことで、クラスを居場所と感じることができずに精神的な緊張が高くなり、その負担から再開しても学校に行きづらくなってしまった人たちが増加していると言われています。もう一つは、担任も含め彼らを取り巻く教職員のカリキュラムや時間割の組み換え、学校行事の代案など通常の業務が増えて、ゆとりがなくなり一人ひとりの生徒に目が行き届かないため、いじめや人間関係のトラブル等、生徒の悩みや動向に対して対応する余裕がなくなっていることが挙げられています。

高等部の生徒の皆さんは人との関わりがあまり上手ではない人たちが多いようです。自分から相手に話しかけることが苦手な人は、新学期から続いた休校や分散登校などの臨時時間割、その中での班行動やグループワークに不安や疎外感を感じたり、そこでのトラブルから学校を行き渋りがちになったり、不登校に至るケースも多くなっていたはずです。

発達障害傾向の人たちは、人間関係がうまくいくともう一つ踏み込んだ友人関係を要求してしまうので、距離感や人間関係のタイミングなどをうまく測れない人たちは、時折トラブルを起こしてしまう傾向があります。新学期などまだ人間関係が安定していない時期は人間関係のトラブルが起きやすいのです。コロナ禍におけるこのような時期ではその不安が必然的に強くなります。

いじめはその不安から起きることが多いのです。他の人を批判したり、疎外したりすることで「いつか自分がいじめられるかもしれない」という不安から逃げようとする心理が人にはあります。自分を守るために自分の欠点やできないことを担任のせいにしたり、クラスメートのせいにしたりして自分を守ろうとする心理も働きます。まずはクラスでおとなしい人や衝動性が強く、声が大きいなど周りに迷惑をかけるような人がターゲットにされることが多いのです。いじめを始めた首謀者はなるべく多くいじめに賛同する仲間を増やしていきます。そこから離脱する人がいたらどんな手を使ってもそのことを阻止しようとします。

発達障害傾向がある子どもたちには、自分自身がそのターゲットになったことがある人が多いので人一倍いじめにたいする臭覚が鋭く、自分がターゲットにならないためにもいじめに同調する傾向が強いと思います。

通常級でより成熟した環境の場合は倫理感が強い子が中心になり議論の場を設けてクラス内のいじめをよしとしない抑止力が働くのですが、高等部生徒の皆様のように自分がいじめられた経験が多い子たちは、自分がいじめられてしまう不安から逆に他の人をいじめることで安心感を得ようとして今までの被害者が今度はいじめの加害者になるケースが少なくないのです。

そのような人は複数の人間関係から1対1の関係を求めて、その関係においては唯一無二の存在でないと我慢できない人が多いように思います。友人関係でも、異性との関係でも自分だけを見てくれないとだめなのです。その感情が抑制できないので問題行動をわざと起こして相手の気を引こうとします。そのようなことをすればするほど人の気持ちは離れていきますが、そのことがわからないのです。

お問い合わせはこちら