[高等部通信5月号]学園長より~可能性の扉~2

2020年5月18日

2、春先の不安による情緒の不安定さ

新学期に入りましたが、このような状況に落ち着かない人たちがたくさんいると思います。先の東日本大震災の際も自閉症や多動性障害などの発達障害のお子様とその保護者の方々は、避難所生活の長期化によって、当初にはなかった様々な困難が生じてきたと報告されています。自閉症のお子様は、もともと変化に対応することが苦手です。これまでの日常生活とはまったく異なる避難所での生活は大変なストレスであり、不眠、いらいら、パニックなどの症状が悪化します。

 

また慣れない避難所での生活は、自閉症に多く見られる聴覚や視覚の感覚過敏症を悪化させたようです。

 

騒がしく大勢の人が視界に入ってくる体育館などでの避難生活は、一部の自閉症の子どもには堪え難い環境です。一部の避難所で取り入れられたようですが、カーテンやタオルによって周囲の刺激を遮蔽する生活環境が必要になりました。避難所では周囲から遮蔽され、夜は暗くすることのできる空間を確保することが望まれます。注意欠陥多動性障害の子どもの多くが、コンサータなどの薬で治療されるようになりました。東日本大震災で被災した子ども達には、発達障害の有無にかかわらず、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や不眠、不安などの症状が見られました。

 

発達障害のあるお子様は、こうした二次障害が起こりやすいハイリスクのお子様方なのです。自宅にいることを余儀なくされ、いつものルーティンの生活ができない今の状況は、お子様方に大きな負荷をかけることになっています。ましてや家庭学習を強いられている家庭のお子様は好きなゲームなどを勉強によって制限されると余計ストレスやイライラが強くなり、パニックや衝動性が起きやすい状況になります。報道よる過剰な心配で不安が強くなるお子様も多くみられるでしょう。

 

もともと新学期は、クラスメートが変わったり、担任の先生が変わったり、新しい環境に適応するのに時間がかかる人が多いのではないかと思っています。臨時休校で登校できないからとは言え、このようなお子様方がストレスを感じないわけはありません。新入生は新しい環境の変化に加え、家庭にいる機会が長ければ長いほど、クラスになじめなかったり、いじめをうけたり、先生になじめなかったりした過去の嫌な思い出がフラッッシュバックして、不安を募らしている人も多いと思います。毎年夏休み明けに自殺するお子様が多いと言われているように、学校への不安が強いお子様ほど長い休み明けの不安は増大します。

 

勉強に関しても公立学校では、家庭学習用として教材やプリントなどの課題が学校から配布されています。自主学習用に教材や動画をご紹介している学校もあり、自宅の端末等を利用して、コンテンツを視聴しながら学習の復習や予習をすることができる地域もあるようです。高等部に在籍の生徒の皆さんは、「読む・書く」に苦手さがあり教科書ワーク的な自主学習教材(レポート)を消化することにかなりの負担がかかる生徒です。動画などの教材も一方的な配信なので、今までのつまずきに対する一人ひとりへの配慮がないと、配信教材を理解のヒントに結び付けられる人は少ないのではないかなと思います。家庭学習で、できない感が強くなると余計にこれから勉強する新学年の学習に気が重くなり、ほかの人にくらべて自分はできないと考える自己肯定感の低さが露呈してくるでしょう。このことが、学校が再開された後の授業や勉強に対する不安につながると私は思います。学力不振は不登校になるきっかけの主な理由の一つです。

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