[高等部通信6月号]学園長より~可能性の扉~2

2021年6月10日

2、「うつ」に見られる二次障害について

 

昨年度の休校で家庭学習を余儀なくされた高等部に在籍の生徒の皆さんは、「読む・書く」に苦手さがあり教科書ワーク的な自主学習教材を消化することにかなりの負担がかかる生徒です。動画などの教材も一方的な配信なので、今までのつまずいた課題には、認知的な問題が起因して継次処理ができず、配信教材のコンテンツを見て、どこから手をつけたらよいかわからない人も少なくなかったのではないかなと思います。授業についていけない生徒はレポートの課題についていけず、学習に気が重くなります。このことが、学校生活の不安につながると私は思います。学力不振は不登校になるきっかけの主な理由の一つのため、「他の人に比べて自分はできない。」と考える自己肯定感の低さが中学校のときと同様に露呈してくる状況を心配していました。

もともと新学期は、クラスメートが変わったり、担任の先生が変わったり、新しい環境への適応に対する不安を抱えながら新学期を迎え、春先は精神的なバランスが崩れ、精神的な不安定さが助長しやすい時期なのですが、昨年度からのコロナ禍での学校の休校やイレギュラーの時間割のため今まで以上に学校生活への不安が増大したと考えられています。これらの不安と共に、家庭にいる機会が長ければ長いほど、クラスになじめなかったり、いじめをうけたり、先生になじめなかったりした過去の嫌な思い出がフラッッシュバックして、不安を募らせている人も多いと思います。毎年夏休み明けに自殺するお子様が多いと言われているように、長い休み明けのお子様の心理は、学校での不安が多いほど長い休みの間に不安は増大します。昨年度のコロナ禍では、中程度の鬱を発症している高校生は全体の30%になると報道されていました。

ましてや例年より梅雨入りが早く関東地方でも5月中の梅雨入りが予想されているこのような状況では、低気圧が影響する毎日の雨模様でいつも以上に不安定な生徒が多く見られ、これから6月にかけて精神的に不安定な生徒が多くなることが想定されます。

 

一般的な「5月病」というと、ゴールデンウィーク明け頃から毎日の生活にやる気をなくしてしまう状態が続くことで、新入社員のサラリーマンや大学生の新入生などに見られる新しい環境に適応できないことに起因する精神的な症状を指しています。医学的には適応障害や気分障害、鬱(うつ)と診断される症状です。症状としては、いらいらすることが多くなったり、学校に行くことが億劫になったりすることがあります。「不安」「焦り」「憂鬱さ」を強く感じるようになることもその一つです。

 

朝、なかなか起きることができない、夜眠れない、食欲がない、頭痛、めまいなどを頻繁に訴えるようになったら要注意です。タイプ的に言うと真面目で完璧主義的な性格で、自分で早く環境に適応したいと頑張る気持ちが強い人ほど、期待していた新生活のギャップに落ち込んだり、必要以上に頑張りすぎたりして緊張が強くなり、モチベーションが継続できなくなる傾向にあるようです。このような症状が6月にかけて発症する症状としてしては充分考えていかなければいけないことです。

 

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の発令や蔓延防止等重点措置などによって、対象地域の子どもたちの不安が非常に高まっていることが容易に考えられるので、お子様の気持ちの不安定さを見逃さないように、保護者の皆さんには家庭でも十分に注意していただけたらと思います。

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