[高等部通信6月号]学園長より~可能性の扉~2

2020年6月22日

2、大人の発達障害について

知的な遅れを伴わない高機能自閉症、アスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害などを「知的障害が軽度である」という意味で「軽度発達障害」と称することがありました。しかし、知的な遅れがない人の中にも、その他の部分で重篤な困難さをもっている場合があります。そのことから、「障害そのものが軽度」と誤解される可能性を危惧して、最近では「軽度発達障害」という言葉は、あまり使われなくなってきています。(平成19年3月に文部科学省から「軽度発達障害」という表現を、原則として使用しない旨の通達が出されました。)

 

現在は大人になるまで見過ごされていた障害として「大人の発達障害」という言葉が広く認知されるようになってきました。発達性運動協調障害や軽度の発達精神遅滞(IQ50~69)、広汎性発達障害(PDD)も含めて、大人の発達障害にみられる「少し変わった人」、「厄介な人」、「めんどうくさい人」「扱いづらい人」という表現の総称として「グレーゾーン」などの言葉と同様に「軽度発達障害」という言葉を再び耳にするようになってきました。「グレーゾーン」とは精神科の診断基準とされているDSM-5やICD10などの基準に照らし合わせると発達障害とは言いきれない人が多く、そのような人たちに「グレーゾーン」という言葉が使われ始めています。

 

特別支援教育が公立学校で導入されてから10年以上の歳月が過ぎ、LD(学習障害)、ADHD(注意・欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)など発達障害傾向の生徒が普通学級で約6.5%該当すると言われて久しく、社会性のつまずきによる学校生活における問題行動や知的な遅れではない学力不振などの問題は、それ以外の生徒にも同じような問題を抱える生徒は少なくなく、社会に参加している大人の人でも生きづらさを感じて、他者とうまく付き合えないと悩んでいる人たち、こだわりが強く他者との摩擦が多い人たち、その場の状況を踏まえた自然な振る舞いができない人たちが多くいるということを社会全体が気づき始めています。

 

「大人の発達障害」「軽度発達障害」「発達障害グレーゾーン」など近年は、今まで特別な支援を必要としなかった人たちが、社会に出て適応できずに多くの悩みを抱えている人たちが少なくありません。

 

また、公立学校で特別支援教育を必要として通級学級に在籍していた人たちや特別支援学級で情緒クラスに在籍していた人たちの多くは、診断は受けているものの療育手帳が取得できず高等学校に進学した人たちで、その後は高等学校の特別支援教育が現実として機能していないため卒業後、進路が見いだせないまま社会参加ができない人が多くいます。

このような人たちはそれまでの学校生活で自分の居場所が見つけられず、自分自身のできないことだけで評価を受け、自信を待てないまま生きてきたので自分のことも自分で認められず、他者のことも受け入れられず周りとの関係がうまく取れないまま発達のゆがみが生じている場合も少なくありません。そんな人たちの多くが精神的にも不安定な人たちで「鬱」「統合失調症」「強迫性障害」「不安障害」「心身症」などの傾向がみられる人たちも少なくありません。

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