[高等部通信7月号]学園長より~可能性の扉~4

2020年8月3日

4、SNSと人間関係のトラブルの関係について

連休明けから梅雨入りした今の季節は精神的にもとてもきつい時期だと思います。1年のうちでも一番の頑張りどころです。

高等部の生徒には、人間関係で悩んでいる人たちがたくさんいます。大半の人たちは、小中学校時代から同じ悩みを抱えています。常に他人から自分がどう思われているのかを考えている割には、相手の気持ちを考えずに一方的に自分の気持ちを伝えるような言動を取ってしまいます。相手に拒絶され、自分の気持ちを受け入れてもらえないと気付くと相手を批判するか、相手から疎外されたとして相手を遠ざけてしまうことが多いことが一つの特徴だと言えるでしょう。人間関係で衝突した次の朝、急に不安で胸がいっぱいになって登校することが出来なくなってしまうことが、人間関係のトラブルを繰り返している一つのパターンともいえると思います。

中学校の時は行事に参加できなかった人たちは数人いますが、高等部の在籍を重ねる中で人間関係も自然に構築できて、クラスの中での生活が苦痛ではなくなる日がきっと来るはずです。

しかしながら、人間関係がうまくいくともうひとつ踏み込んだ友人関係を要求させるので、距離感や人間関係のタイミングなどをうまく測れない人たちは、時折トラブルを起こしてしまう傾向があります。
そして今まで培った誤学習から自分に同情してもらいたい、自分の気持ちをわかってほしい、複数の人間関係から一対一の関係を求めて、その関係においては唯一無二の存在でないと我慢できない人が多いように思います。

友人関係でも、異性との関係でも自分だけを見てくれないとだめなのです。その感情が抑制できないので問題行動をわざと起こして注目を相手から受けようとします。そのようなことをすればするほど人の気持ちは離れていきます。そのことがわからないのです。

一度精神的に不安定になるとなかなか精神的に回復できないのも彼らの特性の一つです。

入学者の中には、小学校時代から不登校が続いた生徒もいます。その生徒は入学した時より明らかに登校日数が増えていて、週1回休むか休まないかになってきています。朝どうしても起きられず遅れてくる日は時折あるものの驚くぐらいの回復力を見せています。

このようにほとんどの生徒の皆さんは中学校在学中に不登校やいじめを経験しています。そのことが継続することによって強迫性障害や統合失調症傾向、拒食過食などの2次的な情緒の混乱に悩んで医療機関に通院している人も少なくありません。学力面での問題に起因する場合もありますが、人間関係のつまずきに起因するケースが非常に多くなっています。最近の高等部の在籍生徒の実例で言うとSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のやり取りの中でトラブルを起こしてしまうケースを多く聞くようになりました。

最終的に社会参加が高等部の生徒の皆さんの大きな課題になります。その課題を乗り越えるには、人との関係性の克服であり、コミュニケーションも含めたソーシャルスキルの獲得に集約されてきます。

自然学園の生徒の皆さんの中には、言語性が低く自分の気持ちをうまく相手に伝えられない特性を持っている人たちが多くいます。コミュニケーションに関しても、一方的で自分の主張や言いたいことに終始して相手の気持ちは理解しようとしないことも特徴の一つだと言えるでしょう。

もともと傷つきやすく、他人に嫌なことをされたり言われたりしたことは決して忘れません。それどころか時折、思い出してパニックになってしまうのです。フラッシュバックと言われている状況もこのようなことだと思います。

高校生のスマホの利用時間は、午後10時から12時に集中しているそうです。

自分の部屋にこもり、嫌なことを思い浮かべて悶々としている時間と利用時間が重なっているので、学校での人間関係のトラブルやクラスメートの不満や自分にとって許しがたい行為をされた場合、SNSを使って自分の言いたいことを一方的に送りつけてストレスを解消しようとする人が多いようです。特に彼らはグループに所属していて他の人たちが自分の打った文章が、他の人からどのように理解されるかを考える余地もありません。自分の意見だけ一方的に主張します。それが拡散するので、当然のようにまわりとの確執を生みます。それが人間関係の大きなトラブルになっているケースが非常に多いのです。いじめにつながることや人間関係の不安につながり情緒の混乱を招くケースは、少なくありません。

自然学園に入学してきた生徒のほとんどは、一般の高校生と同じような人間関係の構築を自然学園の学校生活に求めています。友人ができたこと、その友人とSNSでつながっていることは、彼らの登校する意欲につながっています。自然学園では、あまりそのような生徒の皆さんに制限を加えたくありません。

そうであるならばそれぞれの家庭で安全なスマホの利用の仕方を話し合い、正しく利用できるような約束事を作ってほしいと思っています。家庭内での話し合いが、高校生のネット利用の安全意識を高めると言われています。

現在では、保護者と高校生が、スマホ利用について話し合うことがもっとも大切だということが高校生のスマホ利用の原点だと認識されています。ぜひこの点に関して保護者の方のご協力を仰ぎたいと思っています。よろしくお願い申し上げます。

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