[高等部通信9月号]学園長より~可能性の扉~2

2022年9月5日

2、発達障害があるお子様の学習のつまずきの理由
さて新学期になり、高等部では9月に学力考査(前期試験)を予定しています。発達障害があるお子様方には、読むこと・書くこと・計算することが苦手でどうしても数学や国語、英語などで得点を取れない人たちがいます。書くこと・聞くことが苦手なお子様は、板書をノートに書き写す分量が多い先生の授業についていけない人たちが少なくないでしょう。
話すことが苦手な人は、順番に答えを求められたり、頻繁に誰彼構わず答えを求められたりする授業だと緊張してしまい、精神的な負担が大きくなります。書くことが苦手な人たちは、レポートを授業中に消化することだけでも精一杯で、学力考査の勉強までとても手が付かない人たちも少なくないでしょう。

授業が理解できず、ついていけないことには理由があります。クラスでの授業では教科書の学習課題を理解させ、レポートを作成させるために、黒板で文章や段落ごとの関係を図示しながら説明し、絵や写真等を見せながら筋道を立てて「いつ、どこで、誰が、何を、どうする」などの項目に沿って理解を促すため継時的な処理が生徒に求められます。聴覚的な処理、視覚的な情報の捉え方、文字を正確に書く能力などに困難さがある場合は継時的な処理に困難さが生じてくるので、長く集中しながら授業に参加することが難しくなります。当然のことながら教科書の学習課題を授業で理解することができず、レポートの解答欄に答えが書き込めないお子様は授業に参加することが負担になってきます。黒板に書かれた模範解答を書き写すだけでも精一杯なお子様は学習意欲がなくなり、自己肯定感の低下は加速していきます。

高等部の生徒の皆さんは、漢字が覚えられない、英単語が覚えられない、計算が苦手、繰り上がり繰り下がりの計算ができない、図形やグラフの問題がさっぱりわからない、数学の文章題が解けない、黒板の字を書き写すことが苦手である、先生の説明が頭に残らず理解できない、授業中に先生に指されても頭に浮かんだ答えを言葉として伝えられない、長い文章を読むことや理解することができない等、学校の授業についていくことが出来ず成績が伸びず、学習に対して無気力だったお子様が多いと思います。そしてこれらはワーキングメモリと言われる言語的な短期記憶や視空間的な短期記憶またその処理の弱さにも関連しています。

一人ひとりのつまずきは、学習面においても教科や分野によってできない課題がそれぞれ違います。計算を得意としている人も図形やグラフの計算は苦手であったりします。その一つとして文字や記号を認知(情報を処理する力)する言語的理解の優位性や空間的認知の優位性などの偏りが起因していると考えられています。

国語の場合でも文章を読み取り理解する読解力は高いのに、漢字を覚えることが苦手であったり、語彙を的確に使いこなすことが出来なかったり、考えを文章にしてまとめることが出来なかったりする人は少なくありません。国語の読解は視覚的な認知力だけではなく、自閉症スペクトラム傾向の人たちに多く見られる『心の理論』と言われる、相手の立場や気持ちになって他者を理解しようとする力が必要となりますが、この力が弱いことで、筆者の考察や主人公の気持ちの移り変わりがわかりづらい特性があります。ましてや細かい文字を認識したり、記憶したりすることに苦手さがある人だと、文字や段落を飛ばして読んでしまうなどの困難さが生じて、文脈がつかめないことがよくあります。固有感覚のバランスが悪い人は字を書くことにも困難さを生じる場合があります。

昨年以上の感染者の拡大により、高校生など10代の若者に対する世の中の風当たりの強さや、自粛の慣行により変化を余儀なくされた家庭生活のストレスといった新たな要因から、昨年以上に精神面のリスクの高まりが危惧されています。教員の多忙化によって兆候が見逃される恐れもあり、教育現場で緊張感が高まっています。これは高等部の生徒の皆さんも例外ではないと思っています。

勉強面でも2学期の前期試験後から勉強がわからなくなって諦めてしまうお子様が多くなる時期でもあります。このような状況は高等部に在籍されている生徒の場合、小学校や中学校で学校への行き渋りや不登校を経験している人は少なくないので、身に覚えがある人はいると思います。 

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