高等部: 4月号学園長ブログ-4

2024年4月30日

4、令和6年度 自然学園入学式式辞

 4月9日(火)に春日部市民文化会館で令和6年度入学式を挙行しました。式辞として新入生にお話しさせていただいた内容の一部を掲載させていただきます。

『現在教育現場では、「生きる力」という言葉が盛んに教育目標として使われます。新学習指導要領でも「生きる力」という言葉が用いられています。特別支援教育においてもこの言葉はしばしば使われます。これらに用いられている「生きる力」という意味は生きていく上での能力(スキル)全般を指しています。

生きる力とは技法ではなく、生きていくための意欲だと私は考えています。教育とは生きていくための意欲を教え授けるものです。

自然学園の教育とは一人ひとりが抱えている天から授かった能力、「贈り物」を彼らに気付かせてあげること、そしてその能力が開花していく上での支援する側と支援を受ける側とのお互いの歩みを教育と定義づけています。そして、そこから生まれる彼らの前向きな意欲こそが新入生が社会に出て自立するための大きな力になるはずです。

 さて、皆さんが、本校で高校生活をスタートするにあたり、期待と、身に付けて欲しいことを3つお話しいたします。 一つ目は『多様な人々と協働できる能力』を身に付けることです。唯我独尊という言葉がありますが、この言葉の本当の意味は、我々人間の命は尊く、皆平等に尊いということです。頭の良し悪し関係なく、人種も性別も関係ない、有名かどうかも関係ない。

人気者かどうかも関係ない。地位の高さも関係ない。働けず寝たきりであっても関係ない。みんな平等に尊い目的をもって生まれてきている。皆さんは、一人ひとりが唯一無二の存在であり、かけがえのない存在です。他人との比較ではなく、自分自身に対して信頼と自信を抱いてください。そして、その上で他者を理解し、「人の気持ちに寄り添うことのできる優しさ」「コミュニケーションを大切にしながら物事を進めることができる柔軟性」を主体的に身に付けてください。社会に出るためには、企業の利益に直結するスキルとして「利他の心※を大切にし、協働すること」を、3年間の高校生活で身に付けて欲しいと思います。
※利他の心…自分のことより相手の幸福を願うこと。自分を犠牲にして他人のために尽くすこと。

二つ目は『自分自身の夢を持ち、できることに主体的に取り組むこと』です。 「一隅を照らす」という言葉がありますが、他者と自分を比べて落胆し、自分を否定し立ち止まることが一番いけないことです。必ずあなたにもできることがあり、それは人には気付かれない目立たないことかもしれません。あなたにもできることが必ずあります。できることを一つずつ積み重ね、できることを広げていくことが何よりも生きる上で大切なことなのです。あなたのできることは、人のために役立つことに繋がり、あなたに助けられる人が必ずいます。その人のために全力を尽くすことが生きることの意味であり「一隅を照らす」という言葉が意図することなのです。

昨年のWBCで日本を優勝に導き、アメリカンリーグでもMVPに輝いた大谷翔平選手の活躍はすごかったですね。投げても打ってもすごい力 を発揮する二刀流は、当初、周りから色々と言われましたが、夢をもって、自信をもって努力したことによって成し遂げられました。大谷選手は「人生が夢をつくるんじゃない。夢が人生をつくるんだ。」と述べています。みなさんも自信をもって夢を語ってください。そして、ただ現実にそぐわない絵空事を語るのでなく、自分にできることを探し、実現に向けて、努力し自分から積極的に取り組んでください。
 
 三つ目は『クラスメートと繫がることで社会性を育むこと』です。このことをこれからスタートする学校生活における最初の課題にしてください。ドジャースの大谷翔平選手が高校時代によく「先入観は可能を不可能にする」ということを口にしていたそうです。この考えがあって二刀流の成功を成し遂げたのだと思います。皆様、これから始まる学校生活に大きな不安を抱いている人が多いと思います。新入生の皆さんは人とのコミュニケーションが苦手な人が多いと思います。いじめを経験したり、不登校を経験したり学校生活にいい思い出がない人も少なくないでしょう。そんな経験から「この人はこんな人だから僕とは合わない」「結局私のことはわかってもらえない」など初めからマイナスなことばかり考えてしまう人はいませんか。皆さんの配属されたクラスが皆さんの「置かれた場所」なのです。そうであるなら「置かれた場所で咲きなさい」。これは元ノートルダム清心女子大学理事の渡辺和子先生が遺した言葉です。皆さんがこのクラスに居場所を見つけたときにはじめて人と繫がる力が育まれ、そのことが社会性を育てるのです。『置かれた場所で咲きなさい』という言葉は、自分自身も含めて、その人のありのままを受け入れること、そして、そのなかに可能性を見出すことが大切なことであると教えてくれているのです。』

―令和6年入学式式辞一部掲載―

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