高等部: 4月号学園長ブログ-5

2024年5月2日

5、発達障害があるお子様の学習面のつまずき

高等部に入学された新入生の皆さんはもとより、在籍生の皆さんも勉強に不安を持っている人たちは多いと思います。

LD傾向(学習障害)がある人たちだけではなく、発達障害がある子どもが学習面でもその習得に困難さを最初に感じてしまうのは、言葉の遅れから生じるコミュニケーションの苦手さが「ひらがな」「カタカナ」などの習得に影響したり、数唱から数字の習得をするのには数量のイメージが頭に思い描けないなどの彼らの特性が大きく影響している場合があるのです。このことを数処理と言います。特殊音節が聞き取れないお子様はひらがなで特殊音節を書きとることが不可能です。ワーキングメモリの問題と合わせて視空間の認知が弱く、固有受容覚など感覚統合の問題が重なると、ノートの枠に字が収まらず、平仮名やカタカナが形作れないといったつまずきを生じる子どもがいます。

勉強に苦手さを感じている人たちのほとんどが読むこと、書くことに苦手さを感じています。学力不振のきっかけは、学校の授業に参加できないことから始まるケースは少なくありません。授業に参加できなくなるきっかけの一つとして、板書をノートに書き写すことの苦手さを挙げている人がたくさんいます。板書に苦手さがあれば書き写すことでいっぱいで、先生の説明を聞くどころじゃないでしょう。どんどん先に授業は進んでしまい、まだ書き写しきらないうちに、次のテーマに進むために書き写していた板書の文字を消されてしまいます。そのことを繰り返し、もう勉強なんかどうでもいいと感じている人は少なくないのではないでしょうか。そのような人たちは勉強ができない人ではありません。多くの人は視空間のワーキングメモリに問題があり、黒板に書かれた文字や記号を頭の中に短期間、記憶しておくことが苦手な人なのです。文字の形状をうまく写しきれず、形作れない人は、文字の大きさが揃ってなく、枠にうまく収められない人がいると思います。文字や記号、数字のかたちを読み取れない人は眼球の運動に問題があると考えられていて、うまく書く作業に苦手さを感じている人は、手先の不器用さに関係する微細運動、感覚統合の問題で困難さを生じていると考えられています。教科書および教科書ワークなどに書かれている文章を書き出すことも苦手です。このようなタイプの人は漢字を覚えることも苦手な人が多いのです。

 読むことの苦手さは、勉強の苦手さに直結します。試験に反映するような知識は、教科書に書かれている言葉を覚える必要があるため、正確に文章を読み取ることができない人は得点に結び付かず、勉強が苦手な人と判断されてしまいがちです。目で追う文字や記号、数字を認識できない人は、やはり眼球運動に問題がある人が多いと思います。このような人は文字を目で追っていると段落を飛ばしてしまったり、単語を飛ばして読んでしまったりしてしまうことがよくあります。やがて、文章を読むこと自体が面倒くさくなり教科書を開くこともしなくなるでしょう。文章の文字や記号などは目で追うことができ音読はできるものの、文章を読んで内容を理解することが苦手な人もいます。このような人は言語的ワーキングメモリが弱いので、文章を読み進めながらセンテンスが変わってしまうと、前に書かれている内容を保持することができないため長い文章になるほど書かれている内容全体の理解に結び付かないのです。主人公の気持ちの移り変わりなどを読み取ることも困難です。

国語の読解問題で、抜き出しの解答を文章中から見つけることはできても、設題の答えを文字制限の字数内でまとめ、書き出すことは非常に困難さを生じてしまいます。作文や、人前で相手に伝わるように自分の気持ちを表現することも同様です。このこともワーキングメモリが関係していて、頭に思い浮かんだ答えとなる箇所を短期に記憶して、整理して一つのセンテンスにまとめる作業は、言語的なワーキングメモリが必要となります。ワーキングメモリは頭の中のメモ帳と言われていて、情報を認知するための短期記憶であり、その記憶を保持して処理し行動を実行するための大きな役割を果たします。LD(学習障害)傾向の人たちをはじめ、発達障害傾向があり勉強の苦手な人たちはほとんどがワーキングメモリに問題がある人たちです。授業中質問されても答えられない、板書がとれない、宿題ができない、テストの得点が取れない等の負担が重なって苦手な勉強から逃げ出してしまう子どもたちのです。年齢が上がり思春期近くになれば、他の子どもとの比較の中でのコンプレックスを持つようになり、自分に対しての自信を失っていきます。その不安な気持ちが2次障害につながっていきます。

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