高等部:1月号学園長ブログ(新春特別編集号)-5-2

2024年1月24日

5、「2022年度不登校最新文科省統計(2023年10月発表)」について(2)

文部科学省の実態調査における不登校のきっかけとしては、小学校、中学校、高等学校とも「無気力・不安」が圧倒的に高い結果になっています。それ以外だと小学校は「親子関係」が続き、「生活リズムの乱れ、遊び、非行」そして「いじめ以外の友人関係の問題」となっています。中学生だと「いじめ以外の友人関係の問題」が続き、「生活リズムの乱れ、遊び、非行」そして「学力不振」・「親子関係の問題」がほぼ同様の順位になっています。高等学校では「生活リズムの乱れ、遊び、非行」が続き、次に「入学、転編入時、進級時の不適応」そして「いじめ以外の友人関係の問題」となっています。

発達障害傾向があり、特別支援が必要な8.8%に該当するようなお子様の場合、そもそも特性として「嫌なことから逃げる」ことや「自己肯定感の低さ、やる気のなさ、無気力」、「不安、緊張感」、「情緒の混乱」などの特性を持っていることに加え、認知発達の遅れや偏りから「授業についていけない」、「指示が入らない」、「集団行動ができない」、「勉強がわからない」と言った学校不適応状況が重なり、クラスに居場所がなく不登校に結びつくことは必然的なこととして考えられます。

高等部の生徒が入学時に話してくれた中学校時代の悩みとして「ゲーム依存」などで睡眠時間が短くなり生活リズムが崩れてしまった話は少なくありません。そのような状況に陥る子どもたちの特性として「コミュニケーションの苦手さ」、「相手の気持ちを理解できない」など、人間関係を上手く築くことができないことが背景にある子どもたちが多いように思います。これらの特性を詳しく見ていくと「自分の気持ちがうまく表現できない」、「運動が苦手」、「行動の遅れ」、「学力不振」などが挙げられます。これらの特性は「いじられる」と言ったからかいの対象になったり、疎外されたり、クラスで孤立してしまうことが起こりやすい状況を孕んでいます。高等学校での不登校の場合は、全日制の場合は単位が認定される出席日数が限定されているので、留年を選択するより転編入を選択する場合が多いと思います。高等部の入学相談でも、高校進学してすぐに「入学、転編入時、進級時の不適応」がきっかけで転入を考えているとのお問い合わせをよく受けます。

そして、文部科学省の不登校における実態調査の統計結果における根本的な問題として「➀子どもが大切だからこそ過度の管理する」、「②子どもに自立してほしいからこその放任主義」、「③子どもに将来成功してほしいからこそ期待している」の3つを挙げています。「➀子どもが大切だからこそ過度の管理する」のケースのご家庭の場合、発達障害傾向があるお子様は自分で考え決断することを自らしなくなってしまう子どもがいます。保護者に依存する誤学習が習慣化されてしまうケースが多いと思います。また「③子どもに将来成功してほしいからこそ期待している」場合は、通常級での在籍を続け、子どもの負担が大きくなるケースや、進学や成績に対して過剰に期待されるものの、親の期待通りにいかないことで無気力や非行行動が生じてくるケースをよく耳にします。発達障害傾向の子どもの場合は、情緒の混乱から二次障害と言われている精神疾患が伴う場合も少なくないのです。

以上のように、昨年10月に発表があった「2022年度不登校最新文科省統計」の結果は、発達障害児童生徒の増加の傾向とも大いに関連性がある問題だと感じています。私自身も長い期間、自然学園をはじめとして不登校生や特別支援教育を必要としている発達障害傾向の子どもたちと関わっている中で、このような結果を複雑な気持ちで受け止めています。

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