高等部:1月号学園長ブログ(新春特別編集号)-6

2024年1月25日

6、発達障害がある生徒の勉強に関するつまずきについて(1)
 
(1)学習のつまずきの原因
3学期になると高等部3年生は1月17日(水)から23日(火)まで、高等部1年生、2年生は1月29日(月)から2月2日(金)の期間で後期試験を実施します。高等学校の場合は、この試験の結果が単位認定に直結し、卒業、進級を決定する評価の基礎点として加算されます。1月は、試験を控えてのレポート提出と試験対策、授業に力を入れなければいけない時期になります。勉強があまり得意ではなく、中学校時代に中間期末テストが嫌でしかたなかった人たちには、試験が近いことで冬休みを憂鬱に過ごしてきた人たちは、少なくないでしょう。

高等部には、勉強が苦手な生徒が多いと思います。テストに対して大きな抵抗がある人も少なくありません。学力不振が学校を嫌いになるきっかけになったり、自己肯定感が低くなるきっかけになったりした人もいるでしょう。また、不登校につながった人もいるでしょう。

学習のつまずきは、読む、書く、聞くなど、情報を処理する認知の偏りに起因しています。とは言っても、視覚的な機能や聴覚的な機能が弱いということではありません。一般の人には気付くことができない、人には見えないつまずきが起因しているのです。「読む・書く」に苦手さがある人は、問題文や文章などを読んで、設問に応じた答えを解答欄に筆記することは困難を極める行為であり、課題とされる項目が「わかる、わからない」、「理解できる、できない」以前の問題です。中学生が、学力考査の前に提出を義務づけられている教科書ワークは、たとえ答えを写すだけだとしても、解答を書き写すだけで他の勉強は手につかない人が多いと思います。宿題などは到底できないでしょう。

このような人の場合、ワーキングメモリに原因があることが考えられます。ワーキングメモリとは、情報を一時的に記憶・処理する能力であり、そのための必要な頭の中のメモ帳の役割をしている機能です。例えば、授業で先生が黒板を使って説明を行う際も、その文字を自分のノートの書き写すには、一度頭の中のメモ帳に、板書にある文字や記号を記録して、ノートにその文字や記号を書き写します。その際の頭の中のメモ帳がワーキングメモリなのです。足し算や引き算などの計算の際には、数字を一度頭の中のメモ帳に記憶させ、計算のルール・手順に基づいて解法し、処理されたその数字を答えとして解答欄に記入します。文章読解も、前に書いてある事柄や登場人物の行動、発言した言葉の記憶がないと、文章が先に進んだ時に書かれている内容を理解することができなくなります。その際も前に書かれている文章の事柄を一度頭の中のメモ帳に残し、登場人物の行動や発言を時間軸に沿って処理するワーキングメモリが不可欠です。

このことからも分かる通り、一人ひとりの感覚的な偏りや情報を処理する認知力の凸凹を把握できれば、どのような覚え方なら記憶し処理しやすいのか、どのようなに課題を提示したら取り組みやすくなるのか、どのようにプリントを工夫したら解答欄に答えが書きやすくなるのかなどを考えれば、課題や問題に取り組めるようになることは不可能ではありません。

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