[高等部通信9月号]学園長より~可能性の扉~5

2020年10月8日

5、第7回 自然学園体育祭についてのお知らせ

10月4日(日)に自然学園は第7回体育祭の開催を予定しています。今年も昨年同様、春日部市立八木崎小学校のグランドと体育館をお借りすることができました。

体育祭は、「3密」を防ぐことに配慮しながら、無理なく楽しく取り組めるプログラムを用意しました。例年より実施する内容は制限されていますが、皆様の頑張りで楽しい学校行事にしてください。学校行事に最も必要とされていることは、高等部の一人ひとりが協力して自分のいるチームやクラスのために練習した成果を出すことに全力を尽くすことです。

このことが日頃から取り組んでいるSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)に結びつく、「社会性」の育成につながっていきます。「ルールを守ること」「人に迷惑をかけないこと」「思いやりの気持ちを持つこと」はそれができれば自然にできるようになることです。将来社会に出るために必要なスキルは、学校行事で経験するグループワークで身につけることができるものです。一つひとつのことを大切にあきらめずに丁寧に取り組んでください。

いつのことか忘れてしまいましたが、体育祭の開催を初めて発表した時の生徒の皆さんの「え~」というどよめきを今でも覚えています。
私は、どよめいた人たちが、「体育がたのしい!」「体育祭が待ち遠しいな!」そんな気持ちに変わってもらえるような体育祭を実施できる学校になれたらいいとずっと思っていました。体育が苦手な人、運動会や体育祭にあまりいい思い出がない人が、本校にたくさんいることを私自身が、一番よく知っています。当初は運動が苦手な生徒に配慮する意味で、体育祭や運動会は実施しないつもりでいました。そんな子供たちの中に、体育の授業で楽しさを実感するにつれて、体育の授業を待ち遠しいと思う生徒が多くなっていると体育科の担当者から聞いていました。

自然学園に入学してきた生徒の皆さんの中には、体を動かすことや基礎体力があり、持久走などが得意な生徒もいるのですが、全般的に団体競技や子どものころから不器用性があり、ダンスやお遊戯など他の人と同じ動きを模倣したり、リズムや他の人に歩調を合わせながら協応したりすることが苦手な人たちが多いようです。跳び箱やマット運動、鉄棒、縄跳びのような基礎運動ができなかった記憶がいまだにある人が多いようです。

その理由として、彼らの特性にある物や人との距離感がうまく図れない感覚の鈍さや、掴む、にぎる、手を突くなどの力の加減の調節や、聴覚、視覚の認知力と運動感覚との連携がうまく統合できないことが挙げられます。
それに加えて体幹が弱く、上下左右のバランス感覚が悪い人が多いので、自分が思った通りに身体がコントロールできないのです。

自然学園の体育の授業では、できないことをできるようにする一人ひとりのつまずきに応じた課題を克服する支援から始めていきます。たとえば、跳び箱が跳べない生徒なら跳べるようにするには何が必要なのかを提示していきます。

手をつく場所に手のマーク、踏み切る位置を足のマークで示してスタートから踏み切るまでの歩数と速さを指導します。そして跳んだ時のバランスの悪さを矯正し、体を補助してあげれば大抵のお子様は跳べるようになります。跳べた事実を精一杯褒めてあげて、そのあと何度も自分自身で練習する意欲を育むことが何よりも大切なことです。跳び箱を跳べないお子様が体育を嫌いではなくなる合理的配慮が必要になるのです。

このような体育の授業を実践した結果、体育の授業を休んだり、見学したりする生徒が少なくなってきました。このような生徒の皆さんは、自分の課題に合った無理のない体育ならやりたいと思っている生徒がほとんどであり、本質的にはどの生徒も体を動かすことは好きであるという確信を私自身、持つことができました。
そして満を持してみんなが参加できる体育祭に踏み切ったわけです。嫌なことのトラウマは成功事例を積み重ねることでしか払拭することはできないでしょう。自然学園の体育祭がきっかけで、今まで運動会、音楽祭などを苦手としている人の気持ちに変化があることを願っています。

チームワークでの勝利を目標に置いて、自分の役割を果たすことに一生懸命に頑張ることが体育祭参加の意義です。

競技の結果だけを見た自分が満足するためだけの勝ち負けにこだわらない。

他者を励ますこと、チームメイトのミスをカバーすること、自分の気持ちに負けないことが、スポーツマンシップであり、自然学園体育祭の理念です。

自然学園の体育の授業では、できないことをできるようにする一人ひとりのつまずきに応じた課題を克服する支援から始めていきます。体育祭では、なるべく次の動作がしやすいような指示を具体的に提示することに気をつけ、認知的なつまずきをカバーしていきます。勝敗よりも競技に参加する楽しさが実感できるような合理的配慮を取り入れていきます。

みんなで体を動かして、汗を流して、大きな声で応援して、本当に楽しかったと思える体育祭にしたいと思います。皆さんの活躍を期待しています。体を動かすことや小中学校時代に体育の授業を苦手としていた人も、精一杯、我を忘れて競技に打ち込む自然学園在校生の元気な姿をお見せすることができると思います。

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