中学部:中学部通信卒業記念号 学園長ブログ~可能性のとびら~-3(2)

2026年3月22日

もともと記憶とは、健常の人でも20分後に42%、1時間後は56%、9時間後は64%、6日後は76%の割合で忘却してしまうものです。忘却を食い止める方法は、一定時間すぎたあとに繰り返し復習するしかないとされています。学習したその日の夜、1日後、3日後、1週後と定期的に繰り返して復習することが不可欠です。

通常級で授業を受けている時、特に黒板に書かれている文字を書き写すことが苦手で、そのことが心労になっている人はいませんでしたか。その苦手さは、視空間のワーキングメモリの弱さや感覚統合の問題が起因した不器用性や目と手の協調性などに関係しています。眼球運動にも起因している場合があると言われています。だとするとうまく書けない苦手さは決して努力が足らない訳ではないのです。実際はまだ写しきれていないのに黒板を先生に消されてしまったり、書き写すことの遅さを注意されたりして、投げやりになってしまっている人はいませんでしたか。

また、授業中配布されたプリントの説明を先生から受けている際に、何枚目の何番の何項目を説明しているか、説明箇所を聞き逃して話している箇所を探してしまった経験がある人はいませんか。先生がクラスの生徒に対して一斉に話す内容を聞き漏らしてしまうことがよくある人は言語的なワーキングメモリの弱さがある可能性があります。決して授業中別なことを考えて「ボーッ」としている訳ではないのです。でもそのことが続いて、授業内容が理解できなかったり、先生から質問されて質問内容がわからなかったりすることが立て続けにあると、自分は他の生徒と比べて勉強ができないとあきらめて投げやりになってしまっている人はいませんか。

学習に対する無気力はこのようなことから起因する場合が多いのです。発達障害傾向の子どもたちはこのような状況が学校生活でも継続すれば複雑性PTSDの症状が発症しやすく情緒が不安定になりがちです。このような状況は不登校の理由となる内訳の2番目に割合が多い「不安・抑うつの相談があった」に関係してくる項目です。そうだとすると決して怠惰で学校の授業を不真面目に取り組んでいたり、授業をさぼったりしている訳ではないのです。

近年は、「発達障害グレーゾーン」、「発達障害もどき」「境界線知能」という内容を扱った書物が出版され、このような聞きなれない言葉が世の中に認知されていくにしたがい、発達障害があり特別支援教育を必要としている子どもたちだけではなく、通常級に在籍していて発達障害の診断が出ていない極めて発達障害の特性に近いつまずきがあるグレーゾーンの子どもたちや、知的障害は認められないものの知的な遅れが見られる知能的にも境界域であるグレーゾーンの子どもたちが注目されています。

私は「グレーゾーン」 「境界線知能」だから勉強に遅れがあるのではないと考えています。LD(学習障害)傾向やADHD傾向のお子様には、凸凹が大きいものの平均したIQ値は平均であるIQ100をはるかに上回る子どもたちがいます。その凸凹が起因して特定の教科や課題につまずいている子どもたちとの関わりの中で知的な問題や発達の偏りだけが問題ではないことは明らかです。学力不振で悩んでいる子どもたちの多くは学ぶことを放棄してしまった子どもたちで、むしろ学力不振の原因は「学習的無気力」にあるように思います。

発達障害の子どもたちの場合は、その学習を負荷なく、楽しく学習するには彼らのワーキングメモリのつまずきを把握し理解したうえで、彼らが学習しやすい環境や勉強の仕方を提示しなければなりません。彼らが負担にならないような課題や学習環境を提示してこそ継続して勉強に取り組んでもらえるようになるのです。

そしてその結果、短期記憶が長期記憶に移行され、学習で身に付けた知識の幅が広がっていきます。できたことをほめて認めてあげれば自分に自信が持てるようになります。だれもが褒められることを嫌うお子様はいないと思います。いままで自分では一生懸命やっているつもりでも、出来ないことや間違えることが多いことに対して怒られたり馬鹿にされたり蔑まされたり、健常のお子様が経験したことのない思いをずっと重ねている子どもたちなのです。

そしてできた課題を褒めてあげ、自分でもできることを実感させてあげることが一番有効な学力向上の近道です。そこから実感する「できた」は学習意欲に繋がります。学習意欲は凸凹の高い能力に働きかけ、できないことを手助けし能力全体を押し上げることに結び付きます。

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